「おにぎり」の価格がじわりと上昇している昨今、セブン-イレブンが、「しゃけ」の「おにぎり」を一気に50円値下げして120円台で販売を始めたという情報が話題を呼んでいる。実際には、従来から販売している「味付海苔 炭火焼熟成紅しゃけ」(175円/税込189円)とは別に「手巻おにぎり しゃけ」(128円/税込138.24円)を発売したというのが真相だが、なぜ「しゃけ系おにぎり」を2種類販売するのか。また、税込み価格が300円を超える「おにぎり」も販売しているが、強気の価格の商品も積極的に投入する理由とは何か。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。
全国に2万1566店(6月末現在)を展開し、国内コンビニチェーン1位のセブン。プライベートブランド(PB)の総菜類はクオリティが高いと定評がある一方、他チェーンに比べて価格がやや割高で量が少ないというイメージも強い。他チェーンに追随するかたちで5月には価格据え置きの増量キャンペーンを実施したが、直近の2024年3~5月期決算では国内コンビニ事業の営業利益が前年同期比4%減となるなど苦戦している。
「紅しゃけ」と「しゃけ」は何が違う
そんなセブンの主力商品である「おにぎり」。オーソドックスな具材で購入層も広い「紅しゃけ」は税抜き価格で110~120円台ほどだった時代の印象のままの人も少なくないが、現在では175円、税込みだと189円にまで値上がりしている。「紅しゃけ」に限らず他の「おにぎり」も高価格なものが目立つ。「味付海苔おにぎり 熟成すじこ醤油漬け」は172.80円(税込/以下同)、直巻おむすびの「和風ツナマヨネーズ」も172.80円、「大きなおむすび厚切り豚ロースの生姜焼きマヨ」は270円、「大きなおむすび 鳥めし」は264.60円、「丸ごと半熟煮玉子おむすび」は280.80円などとなっている。
セブンは「紅しゃけ」の販売を継続する一方、今月には「しゃけ」を138.24円で発売。税抜は128円となっており、かつてのセブンを知る人々にとっては「昔の価格に戻った」という印象を抱くだろう。
「紅しゃけ」と「しゃけ」は何が違うのか。ともに京都八代目儀兵衛の監修(ご飯監修)だが、原材料名をみると、両方ともに
・塩飯(国産米使用)、鮭フレーク、海苔(国産)、pH調整剤
と同じで変わりはない。実際に食べたコンビニチェーン関係者はいう。
「米飯については特に違いは感じられないが、海苔は『紅しゃけ』は味付き海苔、『しゃけ』は味が付いていない海苔を使用している。あとは具材が『紅しゃけ』か『しゃけ』かという違いだが、言われてみれば『紅しゃけ』のほうがやや風味が豊かかなとは思うものの、大きな差というのは感じられなかった」
ちなみにセブンは今月、「手巻おにぎり ツナマヨネーズ」を138.24円(税込)で発売したが、従来151.20円で販売していた同名商品からの切り替えとなるため、事実上の値下げとなる。「しゃけ」と「ツナマヨネーズ」で対応が分かれた理由は何か。
「正確な理由はわかりませんが、『紅しゃけ』の原材料の仕入れ先との契約が長期契約になっていて期間がまだ残っているなど、細かい事情があるのかもしれない。もともと消費者の間では紅しゃけが180円というのは高すぎるという声が多かったので、売れ筋である『しゃけ』系の商品の価格を税抜きで120円台に戻したいという意図があると考えられる。データを重視するセブンのことなので、当面は『紅しゃけ』と『しゃけ』を併売しつつ販売動向を観察して、圧倒的に『しゃけ』のほうが多く売れるという傾向が出れば、高い『紅しゃけ』のほうは販売を終了させる可能性もある」(同)
セブンの戦略のしたたかさ
前述のとおりセブンには300円近く、もしくは300円を超える「おにぎり」も登場している。たとえば、「大きなおむすび すじこ醤油漬け(鮭まぶし飯)」は356.40円、「山賊むすび」は340.20円となっている。
「セブンの『おにぎり』の価格が値上がりを続けて高額になった、というイメージが先行しているが、昆布や『おかか』などの定番の具材は120円台で提供されており、安くて普通の『おにぎり』を買いたい顧客と、ちょっと高くても付加価値の高い『おにぎり』を買いたい顧客の両方をしっかりカバーしている。このあたりにセブンの戦略のしたたかさがうかがえる」(同)
(文=Business Journal編集部)