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難関資格なのに食えないとされる「税理士」が本当に割に合わない資格だった

文=Business Journal編集部、協力=菅原由一/SMG菅原経営代表取締役、税理士
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「gettyimages」より

 難関国家資格とされる税理士だが、資格取得の難易度が高い割には「食えない資格」ゆえに、取得に要する労力の割に合わない資格という言われ方も以前からされてきた。だが、「工夫や努力次第では年収1000万円は普通に稼げる」(40代・開業税理士)という声も聞かれる。税理士とはどのような仕事内容で、どのような魅力があるのか。そして、十分に「食べていける資格」なのか。その実態を追ってみたい。

 文系の三大国家資格である弁護士、公認会計士、不動産鑑定士に次いで難関資格といわれる税理士。納税のアドバイスや申告書の作成のほか、税務・会計の側面から経営コンサルティング業務を行うなど、業務の幅は広い。税理士法では税理士にだけ定められた以下3つの独占業務があることも大きな特徴だ。

・税務書類の作成
 納税者に代わって、確定申告などで税務官公署に提出する申告書・請求書などを作成。

・税務代理
 納税者に代わって、税務官公署に対して、税に関する法令に基づく申告、申請、請求などを行う。

・税務相談
 税金の申告、所得金額・税務の計算、税務署から調査・処分を受けた際の対応について納税者からの相談に応じる。

税理士になるには

 税理士試験の難易度は高い。以下11科目のうち合計5科目に合格することが必要であり、一般的に5科目に合格するには数年程度かかるケースが多い。必須2科目以外の各科目の合格率は概ね10~15%ほどで、必須2科目は23年度の簿記論の合格率は17.4%、財務諸表論は28.1%となっている。

●必須2科目
 簿記論
 財務諸表論

●選択必須(いずれか1科目以上)
 所得税法
 法人税法

●選択(2科目または1科目選択)
 相続税法
 消費税法
 酒税法
 固定資産税
 事業税
 住民税
 国税徴収法

 試験は年1回行われ、毎年、数科目ずつ受験して合格していくケースが一般的で、1科目以上に合格した段階で税理士法人や会計事務所に勤務して仕事をしながら資格取得を目指す人も珍しくない。大手資格スクール「TAC」の公式サイトによれば、合格基準点は各科目とも満点の60%だが、実質的には競争試験であるため受験者全体の上位10%に入ることを目指す必要があるという。税理士になるには2年以上の実務経験も必要であり、合格科目が5科目に達して資格を取得する者は年間600人程度とされる。

 このほか、10年又は15年以上税務署に勤務した国税従事者は税法に属する科目が免除され、23年又は28年以上税務署に勤務し指定研修を修了した国税従事者は会計学に属する科目が免除されるため、税務署に一定年数勤務すると試験を受けずに税理士になれる。

 SMG菅原経営株式会社の代表取締役で税理士の菅原由一氏はいう。

「全税理士のうち、試験合格組と税務署OB組の比率はざっくり半々くらいでしょう。一昔前は、税務署の後輩に何かと顔が利く税務署OBを顧問に据えておけば税務調査などで有利になるといわれた時代もありましたが、今ではそのような風潮はすっかりなくなりました。また、長年にわたり税務署のなかで働いていた方は、自身では申告書の作成をしたことがなかったりと、意外に税関係の実務に関して詳しくなかったりすることもあるので、税理士を選ぶ際には『税務署OBだから詳しいはず』と安易に考えないほうがよいでしょう」

価格競争が激化、一案件ごとの単価が低下

 税理士は現在、国内に約8万人いるとされ、競争が激しいため、資格を取得しても食べていくのが難しいという声は以前から根強いが、実際にはどうなのか。

「特にここ10年くらいは、税理士を取り巻く環境は非常に厳しくなってきていると感じます。かつては税理士業界のなかでは報酬に関して一定の相場が形成されており、どの税理士に依頼しても一律でいくらと決まっていましたが、2001年に税理士の広告規制が大幅に緩和され、一部の大手税理士法人が安値で受注するなど価格破壊を起こしたこともあり、徐々に価格競争が激しくなり、一案件ごとの単価が低下しています。それに伴って独立・開業のハードルも高くなっており、いったん独立しても食べていけなくて税理士法人などに戻るという人もいます。ですので、資格取得に数年かかることを考えると、割に合わない資格だとはいえると思います。収入面についても年収1000万円に到達するというのは、かなり難しいです」

 では、独立・開業して経営がうまくいっている税理士と、苦戦している税理士の差を生む要因は何か。

「まず、紹介などを通じて積極的に人脈を形成して顧客を獲得していくという営業力が必要です。また、他の税理士との差別化を図るために経営コンサルティング能力を身につけることも重要です。税理士というのは、中小企業の経営者にとっては非常に身近な存在で、いろいろと相談を受ける機会も多いですが、なかなか有益なアドバイスを受けられないことに不満を持つ経営者も少なくありません。ですので経営の勉強をしたり、自身の事務所の規模を拡大させて経営の実務を積むなどして、経営者から頼られる存在になれるかどうかが、独立して成功できるかどうかの分かれ目になってくるのではないでしょうか」(菅原氏)

 税理士という資格・仕事の魅力とは何か。

「企業から財務状況をすべて開示されて財布事情を把握でき、その上で経営者から身近な相談相手として頼られるというのは、税理士という仕事の大きな魅力だといえます」(菅原氏)

(文=Business Journal編集部、協力=菅原由一/SMG菅原経営代表取締役、税理士)

菅原由一

菅原由一

SMG菅原経営株式会社 代表取締役
SMG税理士事務所 代表税理士
元国税調査官の師匠からの学びにより、圧倒的に税務調査に強い税理士として知られ、税務調査立会い依頼が後を絶たない。顧問先の黒字企業割合は85%を実現し、全国平均30%を圧倒的に凌ぐ。
・YouTubeチャンネル
『脱・税理士スガワラくん』
チャンネル登録者数60万人を突破。
・ブログ
『脱!税理士 菅原のお金を増やす経営術!』
全国税理士ブログランキング第1位。
・講演実績
Google、アパホテルなど上場企業、外資系企業も含め1,000回超
菅原が講師を務めるSMG経営塾は会員数が1,000名超
・ベストセラー書籍
「タピオカ屋はどこへいったのか?」「激レア資金繰りテクニック50」「会社の運命を変える究極の資金繰り」
SMG菅原経営の公式サイト

Twitter:@sugawara11

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