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ファミマ、2千店イートイン廃止の密かな狙い…複雑な「コンビニ壁際」事情

文=Business Journal編集部、協力=中井彰人/流通アナリスト
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ファミリーマートの店舗(「Wikipedia」より)

 ファミリーマートが一部の店舗に設置しているイートインスペースを改装して、衣料品や日用品の販売スペースに変更すると発表し、大きな話題になっている。SNS上では賛否両論が飛び交っており、コンビニにイートインは必要なのか、不要なのか、さまざまな見解が見られる。そこで専門家の見解を交え、コンビニのイートインの役割についてさぐってみた。

 ファミリーマートは10月2日、全国約7000店に設置しているイートインスペースを、約2000店について今年度中に商品売り場へと順次変更すると発表。他の店舗については、先行して実施する店舗の効果を検証してから判断するという。

 報道を受けてSNS上では、「めっちゃ使ってるから無くなると困る」「仕事の昼休みに食べる場所がなくなるのは死活問題」など、なくしてほしくないという声が続出。一方で、「まったく使わないから気にならない」「一度も使ったことない」「小学生ぐらいの子どものたまり場になってるから早くなくしてほしい」といった声も少なくない。実際に、あるインターネットサイトの調査では「利用したことがない」「ほとんど利用しない」を合わせた回答が8割を超えており、利用しない人が多数派の可能性はある。それでも、ほかに飲食できるスペースが少ないエリアでは、重宝している人もいるのは確かだろう。

ファミマがイートインを削減する理由

 コンビニにおいてイートインはどれほど重要な役割を占めているのだろうか。イートインがある場合とない場合で、弁当や飲食料品の売り上げに影響はあるのだろうか。流通アナリストの中井彰人氏に話を聞いた。

――ファミリーマートがイートインを削減するということは、売り上げに貢献しない、もしくは運営にとってマイナスであると判断しているのでしょうか。

「マイナスということはないと思いますが、少なくともイートインのスペースには商品を置いていないので、そこから立つ売り上げはゼロです。そのスペースで飲食される商品はほかの売場で販売されているわけですが、『イートインスペースがあるから売れている』とは確認できません。おそらくコンビニも検証はできていないと思います。『ここで食べるスペースがあるから弁当を買おう』という購入意欲を促進する可能性はもちろんありますが、反対に『イートインスペースがないから買うのをやめよう』となるかどうかはわかりません」

――弁当購入者のうち、イートインスペースの利用割合のようなものを出して検証することはできないのでしょうか。

「弁当購入とイートインの利用を正確にリンクさせるのは難しいと思います。イートインスペースがなくなったとしても、定期的にイートインを利用している人が弁当を購入しなくなるかというと、そうも言いきれません。持ち帰って食べる人もいると思います。店舗経営者の肌感覚で、なんとなくはわかるかもしれませんが、数字で出すことはできないのではないでしょうか。

 仕事の途中などで弁当を食べる人もいますが、暇そうな方が時間潰しに滞在しているケースをよく見かけます。小学生やご老人などが、お菓子やアイスなどを食べながら長時間座っていたりします。そのようにお客の滞留時間が長い店舗ではイートインは廃止したほうが店舗には良いでしょうし、ビジネスマンが短時間の利用で退店するような店舗では残したほうがいいかもしれません。そのように、店舗ごとに状況は異なると思います」

――ほかのチェーン店でも同じような状況といえるでしょうか。

「コンビニチェーンは多くの店舗がフランチャイズなので、イートインの運用は店舗(経営者)に任せるというのが実情でしょう。店舗ごとに、店の広さも異なりますし、客層も違います。そのため、どのチェーンも同じように、イートインの効果は量れていないでしょう。そのようななかで、ファミマがイートイン削減に踏み切ったのは、これまでファミマは衣料品や日用必需品、医薬品などの販売がうまくいったという背景があると思います。売れているアパレル商品を置く場所はどこか、と考えたときに、直接売り上げを立てていない場所=すなわちイートインスペースということになるわけです。

 雑誌・書籍のコーナーも縮小傾向ですが、どちらも“壁際”のエリアです。壁際というのは店の売り上げへの貢献度が低い事情があるので、売れる商品を置くことで売り上げにつながる可能性があるのではないかと判断していると考えられます。壁際に衣料品や雑貨を置いて売り上げが上がれば、今までそれらを置いていた棚に、ほかの食品等の売れ筋商品を増やすことができ、さらに効果が上がると期待できます。

 ファミマだけでなく他社も同じだと思いますが、店舗ごとの判断に任せる、というのが結論ではあるでしょう。ただ、実際のところ、コロナ禍以降、イートインスペースが使われていない店舗は珍しくありません。すでにほかの商品販売スペースに替わっている店舗もありますが、放置されている場合もあります。そんな店舗に対し本部として、もっと売り上げが上がる売場にできるという提案をする必要があったのでしょう」

他チェーンでも同様の流れになるのか

――壁際はどこのチェーン店でも売り上げが立ちにくいという背景があるのでしょうか。

「必ずしもそうではないのですが、窓がある店舗では日が差し込むため、食べ物を置きにくいという事情があります。そのため、日が当たる場所には乾き物や雑貨しか置けません。つまり、置けるものに制約があるので、売れ筋商品を配置できない店舗も多いと思います。しかし、ビルの中など日が差し込まない店舗であれば、あまり影響はないでしょう」

――ローソンが窓際にクレーンゲームの設置を進めていますが、同じ背景があるといえるでしょうか。

「そうですね。同じことだと思います。食べ物以外で売れるものやお客の興味を引くものを置きたいということでしょう。セブン-イレブンもダイソーの商品を置いていますが、同様です。それでも、どのチェーンも、店舗ごとに事情は異なるので、各店舗の経営者に判断は任せる、としか言いようはないと思います。

 そもそもコンビニは、誕生から何十年も、売場の面積は大きく変わってはいません。それでも売り上げは伸ばしてきました。つまり、限られたスペースの中で、売れない商品は見切り、売れ筋商品を広く展開するなどの研究と工夫を重ねてきた結果です。その延長線から考えても、イートインの削減は不思議なことではないといえるでしょう」

――イートインスペースの削減は、売れる商品を展開するために活用しようとの判断だとしても、テイクアウトとイートインで税率が異なることで、イートインの利用率が低くなったという背景はないのだろうか。

「それはほとんどないでしょう。おそらく、税率8%と10%くらいの違いを気にするお客はコンビニを利用しないと思います。コンビニは基本的に定価で販売するので、安さを求めるお客はスーパーなどに行くのではないでしょうか。

 したがって、コンビニ側が気にしているのは、食品以外で売れる商品を置けないかという点でしょう。その点でファミマは、売れる衣料品や雑貨があるので、表立ってイートインを雑貨などの棚に変更する、と公言できるわけです」

 イートインスペースを雑貨等の棚に変更し、売り上げが上がるようであれば、ほかの店舗にも順次変更していくであろうし、競合のチェーンでも追随する動きは出てくるだろう。

(文=Business Journal編集部、協力=中井彰人/流通アナリスト)

中井彰人/流通アナリスト:取材協力

中井彰人/流通アナリスト:取材協力

みずほ銀行産業調査部で小売・流通アナリストに12年間従事。2016年退職後、中小企業診断士として独立、開業。同時に、流通関連での執筆活動を本格化、TV出演、新聞、雑誌などへの寄稿、講演活動などを実施中。2020年よりYahoo!ニュース公式コメンテーター、2022年Yahoo!ニュースオーサーを兼務。主な著書「図解即戦力 小売業界」(技術評論社)。現在、東洋経済オンライン、ダイヤモンドDCSオンライン、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT等で執筆、連載中。
中井彰人

Twitter:@nakajalab

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