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NHKネット受信料、解約条件はスマホ端末の廃棄/機種変更か…証拠を要求

文=Business Journal編集部
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NHK放送センター(「Wikipedia」より)

 NHKのインターネット活用業務の必須業務化に伴い、2025年度からネットのみでNHK受信契約を結べるようになる。NHKは今月8日、その受信料を地上契約と同額の月額1100円とすると発表したが、NHKが検討しているスマートフォン上での受信契約の解約条件が物議を醸している。「NHKを視聴できる端末を何も持っていないことを、なんらかのかたちで分かるようにしていただく必要がある」というもので、具体的な方法は検討中だが、SNS上では「解約するには捨てるしかない」「契約解除の自由がない」「解約不能」「時代遅れすぎる」などと批判が相次いでいる。また、一度「同意して利用する」ボタンをクリックすると同意を取り消すことができない点にも疑問の声が寄せられているが、なぜこのような形態が検討されているのか。

 現在、NHKはネット業務を「任意業務」「実施できる業務」と位置付けており、NHKのテレビ放送内容の「理解増進情報」に限定するとしてきたが、ネット事業を必須業務に格上げする改正放送法が5月、国会で可決、成立。今月8日には、テレビを持たずにスマホやパソコン(PC)でネットのみで視聴する契約の受信料を月額1100円にすると発表した(地上契約の受信料を払っている人は追加負担なし)。

 NHKは今月開いたメディア向け説明会で、ユーザはいったん契約すると解約するためには「NHKを視聴できる端末を何も持っていないことを、なんらかのかたちで分かるように」証明する必要があると説明。このような形態を検討している理由について「受信料制度をネットにも伸ばしている」「入ったり、やめたりが簡単にできるというのは受信料制度と違ってしまう」などと説明しているが、どういうことか。

届出書をNHKに郵送する必要

 現行の地上波の受信契約は、NHK放送を受信することのできる受信設備を自宅などに設置した者は必ず締結しなければならない。これは放送法により定められている。解約する場合は、以下の事項に該当する必要がある(以下、NHKの公式サイトより)。

(1)受信機を設置した住居にどなたも居住しなくなる場合
 ・2つの世帯が1つになる場合※
 ・世帯消滅
 ・海外転居 など
※ひとり暮らしの解消、単身赴任の解消など、2つの世帯が1つになる場合は、いずれか一方の受信契約が解約の対象となります。

(2)廃棄、故障などにより、受信契約の対象となる受信機がすべてなくなった場合
 ・受信機の撤去
 ・受信機の故障
 ・受信機の譲渡 など

 解約の申し入れはインターネットでは受け付けておらず、NHKの窓口に電話をかける必要がある。電話で窓口担当者に解約の理由を説明し、届出書を郵送してもらい、それに必要事項を記入。廃棄や譲渡の場合はそれを証明する証拠となるものを添付して、届出書をNHKに郵送しなければならない。

「たとえば家族と同居するために既存の自分の受信契約を解約するような場合、同居する相手側の名前や住所を聞かれ、相手側が受信契約をしているのかどうかをNHKが確認し、確認でまで解約が認められないかたちになっているはず。テレビを知り合いに譲渡するために解約する場合も、相手の名前や住所を聞かれ、譲渡の証拠の提出を求められることもある。『そこまで厳しくする必要があるのか』と思われるかもしれないが、そこはものすごく厳格にやっている」(NHK職員)

社会的には容認されがたい

 NHKはネット受信契約の解約でも地上波契約並みの厳格な運用を想定しているとみられるが、テレビ局関係者はいう。

「NHKを視聴できる端末を持っていないことを証明するということは、受信契約の際に使用していた端末を廃棄か機種変更したことを証明できるものを提出するか、もしくは緩い運用になるなら、インストールした専用アプリを削除したことをもって解約が認められるというかたちが考えられる。ただ、NHKは今回の説明会で、NHK受信契約は民間のサブスクのように加入したり退会したりを繰り返すような性格のものとは異なり、入ったりやめたりが簡単にできるというのは受信料制度と違ってしまうと言っているので、アプリを削除しただけで解約できるというかたちになる可能性は低いかもしれない。そもそも個別の端末からアプリを削除したかどうかをNHKに対して証明できるのかどうかも、よくわからない。

 NHKは『受信料制度を棄損することがないよう』にするとも言っているが、ようは『NHK受信料は視聴の対価ではなく、NHKという組織を運営するためのものである』というNHKが従来から繰り返し主張している原則に則りますよ、ということだろう。すでに受信料収入は右肩下がりになっており、将来的に経営的に厳しくなることは必至のため、ネット受信料の最初の制度設計のところで安易な解約を防ごうとするのは当然だろう。

 NHKの受信料は法律で定められた国民の義務的な意味合いもあるため、純粋な民間サービスとは違うというロジックは理解できるものの、サービス解約のハードルが高いということが消費者保護の観点から悪だとされている現在、NHKが検討している解約条件というのは、社会的には容認されがたいといわざるを得ないだろう」

厳しいNHKの経営

 NHKの経営は厳しい。2023年度決算は事業収支差金が34年ぶりに赤字となった。赤字額は136億円(単体)で、受信料収入が前年度より396億円減少したことが主な要因。NHKの受信契約総数は過去4年間で100万件以上減っており、今後も右肩下がりの傾向が続くとみられている。昨年4月からは、期限内(受信機設置の翌々月の末日)に受信契約を締結しなかったり、不正に受信料を支払わない人に対し、本来の受信料の2倍の割増金を課す制度を開始。その一方、昨年10月にはNHK総合とEテレを視聴する「地上契約」、BS1やBSプレミアムなどの衛星放送もセットの「衛星契約」の受信料を約1割値下げした。

 その影響もあり、「NHK経営計画(24~26年度)」では受信料収入は24年度以降も減少して25年度には年6000億円を下回るとしており、24年度から27年度にかけて事業支出を1000億円削減するとしている。具体的には、コンテンツの総量削減などの選択と集中、衛星波・音声波の整理・削減、番組制作費・営業経費の削減などを掲げている。

「誤受信防止措置」

 今回のメディア向け説明会の内容をめぐっては、検討中のスマホでの受信契約開始の手続きイメージにもさまざまな反応が寄せられている。まず、アプリもしくはウェブブラウザ上に「ご利用動向の確認」「NHKのニュース・番組などの全コンテンツを受信・視聴するにあたっては放送受信契約が必要になります」と書かれたメッセージが表示され、ユーザが「同意して利用する」をクリックすると当該端末が視聴可能な機器として扱われ、この時点で受信契約の義務が発生する。ポイントは、一度同意すると同意を取り消すことはできないという点だ。ユーザは会員登録と契約確認を行う必要があり、一定期間が経過しても登録手続きをしないと視聴に制限がかけられ、登録を促すメッセージなどが表示される。登録が確認できない場合は地上契約と同様に割増金が課されるというかたちで検討中だという。つまり、一度「同意して利用する」をクリックすると原則として必ず受信契約を締結する必要があるのだ。

 この仕組みは法律で定められた「誤受信防止措置」として検討されているものだ。放送法第20条の3では、NHKは「特定必要的配信」の受信を開始しようとする者に対して通信端末機器の操作を求める措置その他の特定必要的配信の受信を目的としない者が誤ってその受信を開始することを防止するための措置を講じなければならない、と定められており、ユーザが「同意して利用する」をクリックしない限りは受信が開始しないようにする仕組みといえる。

「スマホやPCを操作しているなかで、何らかのサービスのメッセージが表示された際に誤って、ついうっかり『登録する』をクリックしてしまうという経験は誰しもある。それを取り消せないのに加え、会員登録をしないまま一定期間経過すると割増金を取られるというのは、ユーザから詐欺的だと受け取られても仕方ない。NHKの事業は法律的な縛りが強い関係で柔軟な対応をしにくい面があり、民間企業のネットサービスのように自由にいかないのは理解できるが、消費者の反発を買うような仕様にすることは国民のNHK離れを助長する。あくまで現在検討中の案ということなので、実際にはより今の時代に合った、もっとユーザ寄りの仕様になるのでは」(テレビ局関係者)

(文=Business Journal編集部)

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