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ラーメン店、無料ライス残した客にDM連絡を要求「米残して帰った女子2人」

文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表
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ラーメン店「横浜ラーメン 三郷家」の公式Xアカウントより

 埼玉県三郷市のラーメン店「横浜ラーメン 三郷家」が、無料で提供したライスを残して帰った2人連れの女性客に対し、公式X(旧Twitter)アカウント上で「今、米残して帰った女子2人 見てたらdmください」などと呼び掛けていることが、議論を呼んでいる。一般的に飲食店にとって無料提供する料理とは、どのような位置づけのものなのか。また、コスト的な負担が生じても店が無料サービスを行う理由は何なのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 ご飯・味噌汁・キャベツのお替わりが無料の「とんかつ和幸」、ご飯のお替わりが無料の「やよい軒」などのチェーン店のみならず、料理を無料で提供する店は少なくない。ラーメン店の替え玉無料や、蕎麦・うどん店の刻みネギ取り放題、牛丼店の紅ショウガ取り放題なども広義の意味では無料サービスの一環といえるかもしれない。

 そんな無料サービスをめぐる、あるラーメン店の言動が話題となっている。「三郷家」は今月、X上に冒頭の呼びかけをポスト。続けて、以下の内容もポストしている。

<本当は店にベタベタベタベタ注意書を貼りたくないし 少しずつ注意書が増え見た目が悪くなり 今でも心底嫌ですが 一席毎にライス残し厳禁を貼ります。それでダメなら無料ライスは終了かフォロワーサービスとします。ちゃんとした方にはご不便をおかけし申し訳ありません ご了承ください>

<ちょいちょい勘違いしてる人が居るので言うと ライスは自己申告にしました。その結果残す 体調が悪くとか、食べれなかったは受け入れると言ってます。張り紙もしてます。無言で帰る人に言ってますよ。ウチの店はほぼSNSを介さないと知ることが無い店だから、もし本人が見てたらと言ってます>

 これに対し、X上では以下のようにさまざまな声が寄せられている。

<無料ライスを残すのはマナー違反>

<サービスのライスを残すなんてお店にも農家さんにも失礼だと思います>

<米が値上がりしたり手に入らなくて困ってる状況なので、残されてオコなのはわかる>

<思ったより多くて食べきれないこともある>

<食べてる途中で食べられなくなることもある>

<食べ残しは客に落ち度があるだろうけど、dmで呼び出す必要はない>

<物価も上がってますしライス有料でも良いと思います>

<有料にしたほうがお店もお客さんも良さそうな感じがします>

<DMで名乗り出ろはさすがにちょっと違うと思います>

想定外の伝わり方によってお店の評判を落してしまう可能性

 お客が無料のライスを残して帰ったことに店側が腹を立てるという感情は理解はできるものの、飲食店がこのような行為を行うことは、どのようにとらえればよいのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「イラつくことや理不尽だと思うことが現場で起き、飲食店がSNSを使ってそれを公開することにはリスクが伴います。負の感情に対して共感を求めたり、やるせない気持ちや怒りを誰かに聞いてほしくて投稿しても、それを読んだ人が素直に共感してくれないばかりか、表現によっては自分が悪者のように見られてしまうリスクがあるからです。

 飲食店のオーナーや職人で仕事や経営に真面目に取り組んでいる人ほど、何か起きた時にやるせない気持ちが強く出がちです。『善意でサービス提供しているものを黙って残して帰るなんてやるせないよ、許せないよね』という気持ちなのでしょうが、それを読んだ人がどう思うか、投稿の表現はこれで正しいのだろうかなど、よく考えてから投稿しないと、伝えたかったことと違った伝わり方をしてしまう恐れもあるので注意が必要です。世の中にはいろいろな価値観の人がいますので、想定外の伝わり方によってお店や自分の評判を落としてしまう可能性も考慮してから投稿することが必要でしょう」

無料サービス、じわじわと経営を圧迫

 食材の仕入れ価格が上昇するなか、店側にとって無料で料理を提供するサービスというのは、結構な負担になっているのか。また、負担が大きくても店が無料サービスを提供する理由は何なのか。

「無料で提供するサービスについては、通常であれば収益的には許容の範囲であることが多いです。お米を例にして考えてみます。生のお米1合の重さはおよそ150グラム。お店で提供される1人前のライスに約0.5合使用するとします。お米の価格が上がっている現在、スーパーで売っている安めのお米は5キロで3000円くらいです。お店は通常10キロや30キロで米を仕入れるところが多いですが、キロ数が大きくなると価格のバラつきも大きくなるため、一般の方が馴染みある5キロで計算してみます。約66人前で3000円ですから1食あたり約45円。今まで5キロ2000円以内で買えたときは約30円でしたので、じわじわと経営を圧迫し始めています。1000円で売っている商品に無料サービスとして45円分の商品を付けると、原価率が4.5%アップになるので、経営に影響がないとはいえなさそうです。ですので、残された場合に、やるせない気持ちや怒りの気持ちを抱くかもしれません。

 お店が無料サービスを行うのは、お客さんに喜んでもらう→来店動機につながる→売上が上がるという効果があるからです。提供したサービスが売上アップというかたちで返ってくることを期待して無料サービスをしています。期待していない結果になったり、想定外の行動をとるお客さんもいるでしょう。物価高で原価率が悪化し利益がじわじわ減ってしまっているなか、店側がやるせなさや怒りが滲み出る投稿をしてしまうこともあるでしょう。SNSに投稿する前には、面倒なことに巻き込まれないためにも冷静に文面を読み直してみることが大事だと思います」

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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