スタバ・吉野家、実は無人ロボット配送をやっていた…楽天無人配送、生鮮食品や日用品も

●この記事のポイント
・スターバックス、吉野家、ファミリーマートなどが、無人の配送ロボットによる配送サービスを実施
・配送ドロイドの活用に向けた動きが活発化し始めた背景には、法改正と政府の推進姿勢
・楽天無人配送、無人配送サービスのロジスティクスやオペレーションを独自に開発
大手カフェチェーン「スターバックス コーヒー」が実は無人の配送ロボットによる配送サービスを行っていることは、あまり知られていない。現時点では一部の店舗のみだが、吉野家やファミリーマートなども行っている。配送ドロイドと呼ばれる専用ロボットを使うものだが、フードデリバリーサービス「Uber Eats」を提供するUber Eats Japa(ウーバーイーツジャパン)も今月から大阪市内のローソン4店舗で配送ドロイドによる商品配送を行う。配送ドロイドによる配送は今後、普及していくのか。また、普及に向けた課題は何か。企業への取材をもとに追ってみたい。
●目次
「楽天無人配送」届け場所は90カ所以上にまで増加
日本で配送ドロイドによる配送を先駆けて提供しているのは楽天グループだ。同社は昨年11月から小売店や飲食店の商品を配送する「楽天無人配送」を、東京都中央区晴海全域、月島と勝どきの一部で提供開始。対象店舗と地域を徐々に拡大させ、ユーザーが注文時に指定できる届け場所は90カ所以上にまで増えた。現在利用している店舗は以下のとおり。
・スターバックス コーヒー 晴海 トリトンスクエア店
・スーパーマーケット文化堂 月島店
・吉野家 晴海 トリトンスクエア店
・パティスリーハット
・ファミリーマート 晴海センタービル店
米Cartken Inc.が開発し、三菱電機のグループ会社が同サービス向けに調整したロボットに加え、2月からは米国で自動配送ロボットを展開するAvride inc.のロボットも加わった。楽天Gは、注文内容に応じて最適なロボットの自動割当などを行う独自開発の配送管理システムの改良や、自動配送ロボット10台体制によるサービス提供の実証実験を行ってきた。
配送ドロイドの活用に向けた動きが活発化し始めた背景には、法改正と政府の推進姿勢がある。2023年4月に改正道路交通法が施行され、遠隔操作型の公道走行が解禁。国は事業者に対する財政的な支援も行っている。パナソニックも神奈川県藤沢市で自動配送ロボットのサービス実証を行っている。
「楽天無人配送」はどのようなサービスなのか。楽天Gは次のように説明する。
「スマートフォン向けの専用サイトから注文することで、自動配送ロボットが配送する店舗の商品を、指定したお届け場所で受け取ることができるサービスです。温かい料理や冷たい飲み物、生鮮・冷凍食品など4000品以上の商品を取り揃えており、忙しい日の食事、日常の食材や生活必需品の購入など様々な場面で暮らしをサポートします。また、お届け場所は晴海周辺のマンションやオフィス、公園などで、在宅時に加えて仕事の合間、外出時などにも利用可能です」
どのような技術によって実現されているのか。
「無人配送サービスのロジスティクスやオペレーションは、独自に開発した以下の3つのシステムで支えられています。
(1)ロボット配送専用サイト
お客様が注文する際に使用するスマートフォン向けの専用サイトです。このアプリを通じて、商品を注文します。また注文後も配送中のロボットの位置を教えてくれたり、到着を知らせてくれたりします。
(2)ロボット配送管理システム
注文や配送状況が分かる店舗向けの管理アプリです。注文と配送を一元管理できる仕様となっていて、タブレットで感覚的操作できるため、不慣れな店舗の方でも簡単に操作できます。楽天スタッフが、アプリ操作・配送手配を行う場合もあります。
(3)Robot Gateway
自動配送ロボットは様々なメーカーで作られており、少しずつ機体システムや仕様が異なります。そのため、どのメーカーのロボットにも対応できるよう、『ロボット配送専用アプリ』や『ロボット配送管理システム』との互換性を持たせるためのシステムも開発しています」(楽天G)
今後の展開予定についても聞いた。
「24年11月に晴海全域、月島と勝どきの一部でサービスの提供を開始し、25年2月の新たなロボットの導入や、対象店舗、提供範囲の拡大などによるサービスの拡充を進めており、今まで以上に多くのお客様にご利用いただいております。まずは晴海全域、月島と勝どきの一部で利便性の高いサービスの提供を目指し、配送対象地域の拡大や配送元の小売店や飲食店の追加を目指し、ロボット配送サービスを確立させていきます」(楽天G)
配送ドローンの商用化に向けた取り組みも拡大
配送ドロイドのほかにも、配送ドローンの商用化に向けた取り組みも広がっている。国土交通省が23年度に行った委託事業「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証に関する調査業務」では、9つの事業者がレベル4飛行による自動配送ロボット連携の実証実験を実施した。レベル4飛行とは、人口密集地域での目視外無人飛行。もっとも、法律では配送ドロイドは小型ロボットに限られていたり、ドローンも飛行ごとに申請・承認が必要であったりと、普及に向けたロードマップは短くはない。
配送ドロイドの実用化が進むのか。大手飲食チェーン関係者はいう。
「大きな荷物や長距離配送は運送会社やメーカーなどで無人トラックの開発・実証実験が進んでいるようなので、その進展を待つというかたちになるでしょう。一方、スーパーやコンビニの日用品や食品類、飲食店の料理が配送ドロイドの対象となってきますが、信号での停止・横断やヒト・モノ・車両との接触回避などを踏まえると、ハードルは低くはないでしょう。ヒトがロボットを遠隔操作するかたちですと結局、その人件費が発生しますし、ハード・システムの導入費・メンテナンス費用もかかることになり、コスト削減にはつながりにくいです。
また飲食店の料理は直接、ヒトが口に入れるものなので、ヒトが運ぶということが“配送時に第三者が触ったりイタズラをしていない”ということの担保になっている面もあり、いくら遠隔でロボットの動作を監視しているといっても、ユーザー側の心配というのはなかなか解消されにくいでしょうから、スーパーなどの商品の配送よりもハードルが高くなってくるのではないでしょうか。とはいえ、人手不足は今後も小売店・飲食店の重い課題であり続けますし、配送ロボットの技術的進歩と価格低下は進んでいくでしょうから、将来的には、こういったものを使う動きが広がるという流れになっていくかもしれません」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)