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「しまむら」の営業利益率が、高付加価値の無印良品よりも高い理由…真逆の地味な経営で成長継続

2025.08.30 2025.08.30 10:20 企業
しまむら公式Xアカウントより
しまむら公式Xアカウントより

●この記事のポイント
・しまむら、25年2月期連結業績は売上高・営業利益ともに過去最高を更新
・ほぼ同じ水準の売上高の無印良品を運営する良品計画と比較すると、営業利益・売上高営業利益率ともに上回っている
・良品生活の直近の販管費比率は40%台なのに対して、しまむらは20%台

 大手アパレルチェーン「しまむら」の業績が好調だ。2025年2月期連結業績は、売上高が前期比4.8%増の6653億円、営業利益が同7.1%増の592億円で、ともに過去最高を更新。低価格路線で知られる「しまむら」だが、ほぼ同じ水準の売上高で高付加価値商品を強みとする無印良品を運営する良品計画と比較すると、意外にも営業利益・売上高営業利益率ともに上回っているのだ。その理由は何なのか。そして、ユニクロや無印良品といった強力な競合がひしめく業界内で、なぜ「しまむら」は持続的な成長を遂げることができているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

低い販管費比率が経営のポイント

 まず、「しまむら」の営業利益と売上高営業利益率が、無印良品の運営会社のそれらを上回っている理由はなんなのか。経営コンサルタントでムガマエ株式会社代表の岩崎剛幸氏は次のように分析する。

「もっとも大きい理由は、2社の販管費のかけ方がまったく違うという点です。良品計画の直近の販管費比率は40%台なのに対して、しまむらは20%台に抑えられています。この販管費比率が低いというのが、しまむらがずっと守っている最大の経営ポイントです。以前に比べると上がってきてはいますが、小売業としては非常に低い数値です。良品計画、ファーストリテイリング、ZARA、H&MといったSPA企業(製造小売業)は自社で商品を製造するので粗利益が高い一方、販売のために広告費をかけたり、家賃が高い場所に売り場面積の大きな店舗を出店するので、多額の経費が発生します。しまむらは最近でこそ都心にも出店していますが、銀座の一等地に1000坪の店舗を出すという発想は持っていません。広告宣伝にも多くのお金をかけておらず、そういうところにお金をかけていくという発想がないんです。

 都心にお店を出す場合も、少し駅から離れた場所のビルの3階などを選んでいます。なぜなのかといえば、従来しまむらというお店は、地方の郊外でお客が車で来るような場所で営業して、大きな駐車場を備えて、そこに買い物に来てもらうというロードサイドで商売をするというローコスト経営の典型モデルなんです。その原点を守り続けることで、確実に売上を伸ばしています。粗利率もそれほど高くはないものの、経費を極力抑えて利益をしっかり出すということを続けているのです」

高付加価値商品も充実

 ユニクロ・GUや無印良品など強力な競合が存在するなか、しまむらが一貫して売上・利益ともに成長トレンドを維持できている要因は他にもあるという。

「しまむらが総合衣料品店であるという要素も大きいです。衣料品だけではなく、日用品、子ども用品、雑貨、寝具など、とりあえず生活に必要なものは一通り揃っているという業態の店舗=総合衣料品店は、かつては日本全国に多く存在しました。しまむらも以前から、そうした総合衣料品店のひとつで、子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまでを対象に商品を揃え、特定の層をターゲットにするのではなく、すべての層の人が普段使いできるという消費者の日常の生活に対応するお店として役立ってきたお店なんです。それゆえに都心に出店しなくても、地方の小さな町でも店舗の経営が成り立つのです。一店舗あたりの売上が低かったとしても、十分に採算が取れるという構造なんです」(岩崎氏)

 しまむらといえば、追加生産よりも在庫を売り切ることを重視する「売り切り御免」型のスタイルであることが知られているが、商品開発や人材活用の面でも大きな特徴があるという。

「ユニクロや無印良品との違いとしては、自社プライベートブランド(PB)商品のほかに他社からの仕入れ商品も一定割合あるという点です。ユニクロと無印はほぼ100%が自社ブランドの商品ですが、しまむらは仕入れ商品と自社の商品を混在させるかたちで販売しており、割とバラエティーに富んだ品揃えになっています。いわゆる多品種少量販売で、この点も大きな特徴です。

 そして最近の動きで注目すべきが、高付加価値商品の充実です。少し割高な『CLOSSHI(クロッシー)』『CLOSSHI PREMIUM(クロッシープレミアム)』というPBを強化してきており、全体売上の2割を超えてきていますが、汗がすぐに乾きニオイも出にくい点がウリの『FIBER DRY(ファイバードライ)』シリーズなどは非常に好評です。男性向けの『メンズ FIBER DRY さらっとクール2枚組インナー』は2枚入りで1199円(税込)と、しまむらとしては少し高価格帯となっていますが、このようにメンズ、レディース、寝具などあらゆるジャンルで少し価格が高くても売れる高付加価値の商品が増えてきており、そこまで大きく客数が伸びなくても客単価が上がることで、売上が伸びています。

 人材活用に関していうと、パート社員の活用に非常に長けています。かつては全国の店長の9割がパート社員出身で、パートとして働いていた人がそのまま店長になるという制度が今も続いており、現在でも7割ほどに上るようです。なぜ、パートさんでも店長になって店をうまく運営できるのかというと、マニュアルが整備・徹底されているため、効率的に人員配置ができて少数の店員でも回していけるお店づくりができているからです。現場からの改善提案をもとにマニュアルがつくられており、以前私が見たときには約300ページのマニュアルが11冊ありました。これによって、個々の店員の経験に関係なく、全員が同じようなパフォーマンスを発揮できるようになっているんです」(岩崎氏)

 あえて「しまむら」の課題をあげるとすると、どのような点になるのか。

「ユニクロや無印良品と比べると、海外の店舗が圧倒的に少ないです。ベトナムなどアジアの国では、しまむらよりもっと安い商品を揃えた店が多く存在しており、仕入れ商品もあるなかで海外展開を進めていこうとすると、やや厳しいかもしれません。また、全体の売上のうちECの比率がまだ低く、そこまで強くないというのも課題でしょう」(岩崎氏)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、岩崎剛幸/経営コンサルタント、ムガマエ株式会社代表取締役社長)

岩崎剛幸/経営コンサルタント/ムガマエ株式会社 代表取締役社長

岩崎剛幸/経営コンサルタント/ムガマエ株式会社 代表取締役社長

1969年、静岡県生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのちムガマエ株式会社を創業。流通小売業界のコンサルティングのスペシャリスト。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。これまでに百貨店、GMS、チェーン専門店、TV通販会社、アパレルメーカー、広告代理店など、その領域は広く、ブランディング、ミッション経営、情熱経営の徹底・実践に取り組んでいる。2015年度 立教大学兼任講師、日本商業ラッピング協会理事など。
ムガマエ株式会社の公式サイト