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「AIは女性の武器になる」WAIJが戦略発表会 村上信五アバターも登場

2025.09.22 2025.09.21 22:44 企業
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Unsplashkrakenimagesが撮影した写真

●この記事のポイント
・一般社団法人WAIJが女性のAIリスキリング支援に向けた戦略を発表。4本柱の施策で2030年までに100万人へ学びの機会提供を目指す。
・日本マイクロソフトやGUGAと連携し、AI学習プログラムやスキル認定バッジを展開。新プロジェクト「MIRAIα」への企業賛同も開始。
・戦略発表会では村上信五AIアバター「AIシンゴ」が登場し、女性3人のリスキリング事例を紹介。AI活用の可能性を参加者に示した。

 一般社団法人Women AI Initiative Japan(東京・渋谷、以下WAIJ)は9月18日、「Women AI Initiative Japan 戦略発表会」を開催し、女性のAIリスキリング推進に向けた新戦略と開始するプロジェクトを発表した。

 WAIJはこれまで任意団体として、女性がAI分野で活躍できる機会の創出と支援を目的に活動してきたが、今年5月に一般社団法人化した。

WAIJ戦略は「リスキリング&キャリア支援」など4つ

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代表理事の國本知里氏

 本発表会ではまず、代表理事の國本知里氏があいさつに立ち、AIによる労働市場の変化が女性のキャリアに与える影響について発表し、リスキリングを通じた新たなキャリア形成の可能性について説明した。

 國本氏は、「国の統計や我々の独自調査の結果、AIに代替される可能性が高い職種に就く女性が非常に多いという現実があります。しかし、AIは女性から仕事を奪うものではありません。むしろ新たな可能性を開くツールです」と語り、「WAIJは、このAIという武器を女性たちが手にし、キャリアを軸とした自律的な人生を切り開くためのサポートをしていきます」と宣言。

 女性が自律的に自身のキャリアを選択できる社会をつくるため、WAIJは新たなミッション・ビジョンを刷新し、包括的な支援を行っていくという。

 女性は結婚退社や育休でキャリアが中断するケースが少なくない。在宅勤務の場合、育児や家事の合間にAIでコンテンツ作成や業務改善が可能になる。これまで週5日8時間労働だったキャリアから、週1~3の短期間でも高い品質の価値を出すこともできるだろう。

 女性支援のWAIJ戦略としては主に、「リスキリング&キャリア支援」「コミュニティ運営」「創業支援」「啓発活動」の4つだ。今後は個人レベルによって自分に合ったAIの学び方が求められるが、学んだだけで終わりではなく、それをどうキャリアアップにつなげていくのかが重要になる。WAIJはさまざまな企業と提携しながらキャリア支援として広げていく。コミュニティ運営については、さまざまなロールモデルを提示しながら、つながりを作れるようなカンファレンスを主催していく。

 今後のロードマップは、今年から提携企業や法人などの事務職のスキルキャリアアップできるような提携プログラムを展開していき、2030年には100万人に生成AIを学びキャリアを考える機会を提供していくのが目標だ。

女性のAIチャレンジ応援宣言「MIRAIα」とは

 その提携パートナーだが、プロジェクト第一弾として、日本マイクロソフトと生成AI活用普及協会(GUGA)が発表された。日本マイクロソフトとの協業を通じて、世界標準のCopilot活用の実践ノウハウへのアクセスと、GUGAとの連携によりAI学習プログラムの無償提供を通じて、キャリアアップに活用できるスキル認定バッジの付与などを行っていくという。

 そして、國本氏はこの日から開始するプロジェクトとして、「女性のAIチャレンジ応援宣言『MIRAIα(ミライア)』」に賛同する企業・団体の募集開始とその内容を説明した。

「多くの企業や団体に、女性がAIを学ぶことを推進してそれを宣言いただくという参加型のプロジェクトです。AIを学んでもどうキャリアにつながるのかわからない、という声が多くあり、それに対して企業から、AIを学ぶこと自体がこの社会を変えていき企業を変えていくことにつながる、という後押しが必要と考えています。こうした応援宣言をいただける参加企業をこれから増やしていきます。すでに10社の先行登録をいただいております」(國本氏)

 その先行登録には、サイバーエージェントやソフトバンク、日清食品HD、LINEヤフーなど大手10社が名を連ねている。

 國本氏は次に、この日からスタートした新サービスとして「わたしのAIライフスタイル診断」を紹介した。これは、11個の質問に答えるだけでライフスタイルや働き方、価値観に合ったAIの使い方がわかるという診断アプリだ。LINEアカウント登録すれば誰でも無料で診断を受けられる。なお、公開記念として期間限定で、SUPER EIGHT村上信五をモデルにしたバーチャルタレント「AIシンゴ」とコラボした特別バージョンを提供している(10月17日まで)。

 この特別版では、AIシンゴにユーザーが質問を投げかけると、対話形式で診断が始まる。村上信五の関西弁やユニークな語り口をAIが学習しているので、本人とチャットしているような遊び感覚で診断を楽しめる。

AIリスキリングに成功した女性3人とAIシンゴがトーク

 國本氏のプレゼンテーションの後にトークセッションが行われ、AIリスキリングで新たな選択肢を切り拓いた3人の女性が登壇した。サイバーエージェントでAI推進を担いキャリアアップを実現した上野千紘さん、AIでアプリを開発した平下ひかるさん、キャリア中断を経てリスキリングしAIコンサルタントとして復帰した秋元かおるさん。そして、AIシンゴもここで特別ゲストとして登場し、リアルタイムで会話するデモンストレーションを実施した。

 AIシンゴから3人は日常的にどんなふうにAIを活用しているのか質問があり、それぞれ異なる立場からの実践事例を披露した。

 上野さんはミーティングの後に議事録をまとめる作業やメンバーへのタスクの割り振り、ミーティング調整などでAIの力を借りているという。一から議事録を書いていたメンバーが文字起こしでかなり時間削減することができ、省力化に役立っているようだ。

 平下さんは趣味で続けているフランダンスについてAIを活用したアプリを作成。動画から静止画像を生成して、振り付け部分を簡単に確認することができるようにした。動画を何回も見直す必要がなくなったという。

 秋元さんは育ち盛りの子どものケンカに親はどう介在すべきか悩んでいたところ、AIに質問してみた。AIから「早口言葉やってみない?」みたいなゲームの提案があり、子どもたちの反応を見ながら実践していったそうだ。

 次に、3人からの質問にAIシンゴが答えた。

 上野さんが「AIから見て人間にしかできないことって何だと思いますか」と聞いたところ、AIシンゴの答えは「人間の最強スキルは、失敗しても笑いに変えて立ち直ることや。泣いたり笑ったり、へこんでもまた挑戦する。そのドタバタが人生の味や。AIは便利だけど、心で感じることはできない。せやから、人間はほんまに貴重で愛おしい存在だと思う」。

 平下さんは「AIにチャレンジしたくなる女性を増やすためにどんなことができると思いますか」と質問。これに対し、AIシンゴは「せやな、ほんなら僕から応援ソング作ったろ。作ってる間に次の質問いこか。数分で世界で一つだけの勇気ソングができるやで」と返し、即興で応援ソングを作曲した。

 トークセッションの終わりに、AIシンゴは「AIはとにかく怖がらんでもええんやで、ということが伝わるとええな。仕事や家庭など、忙しいみんなの手助けや可能性を広げる味方になれるんよ。今日来てくれたみなさん、ほんまありがとうな。兄さんも味方やさかい、一歩踏み出そう。こんなことやってみたいなと妄想するだけでもいいし、不安でも大丈夫」とポジティブなコメントを出した。

【WAIJレポート】AIで事務職減少、女性のキャリアは

 さて、AIの進化と普及により、女性の多くが従事する事務職は自動化の影響を受けやすいとされ、経済産業省の試算によると、2040年には214万人の余剰人材が生まれると予測されている。一方で、成長分野であるAIやロボティクスでは326万人の人材が不足するとされており、労働市場に大きなミスマッチが生じている。

 しかし、AIは女性にとっての新たな飛躍のチャンスでもある。AIやデジタル分野には、これまでにない職域や働き方が次々と登場しており、スキル習得を通じて個々の可能性を大きく広げることが可能だからだ。WAIJは、すべての女性が「変化に備える」だけでなく「変化を味方にして挑戦できる」環境を整えるべく、2023年に有志によって立ち上げられた団体だ。

 立ち上げから約2年半で21回のイベントを開催。今年3月にTokyo Innovation Base (TIB)で、AI時代における女性のキャリアと可能性を共に考える1Dayカンファレンス「Women’s AI Day」を開催したところ、400人以上が参加した。

【WAIJレポート】女性の生成AI利用進まない理由は

 9月には「女性AI人材白書2025」を発表。これは、全国の女性1,116名を対象に「女性のAI活用・学習に関する実態調査」を実施し、その結果をまとめたレポートだ。調査結果によると、年齢や職種を問わず、約半数の女性が生成AIを日常的に利用しておらず、生成AIについて知らない状況にあることが明らかになった。ほぼ毎日使用している女性は約3~5%にとどまる一方、「生成AIについて現在学習中」という学習意欲の高い層では、約2人に1人がAIを毎日利用しており、利用状況の格差の大きさが浮き彫りになった。

 AI利用が進まない要因として、多くの女性が生成AIにネガティブな印象を抱いていることが明らかになった。「AIに頼りすぎるのは危険」と回答した人は30.6%、「取り組みたいが自分には難しそう」と答えた人は41.0%にのぼった。

(取材・文=横山渉/フリージャーナリスト)

横山渉/フリージャーナリスト

横山渉/フリージャーナリスト

産経新聞社、日刊工業新聞社、複数の出版社を経て独立。企業取材を得意とし、経済誌を中心に執筆。取材テーマは、政治・経済、環境・エネルギー、健康・医療など。著書に「ニッポンの暴言」(三才ブックス)、「あなたもなれる!コンサルタント独立開業ガイド」(ぱる出版)ほか。