ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 女性起業家とAIの挑戦が交差する瞬間

女性起業家とAIの挑戦が交差する瞬間…「RAISE HER」デモデイが示した未来への一歩

2025.08.06 2025.08.06 23:34 企業

女性起業家とAIの挑戦が交差する瞬間…「RAISE HER」デモデイが示した未来への一歩の画像1

●この記事のポイント
・Women AI Initiative Japan(WAIJ)が主催する女性起業家支援プログラム「RAISE HER」第1期のデモデイが開催され、24名の起業家がAIを活用したサービスを発表した。このイベントは、半年間のプログラムの集大成であり、「卒業発表」として位置づけられた。
・受賞者たちは、自身の原体験や経験から事業アイデアを考案したと語っている。また、プログラムを通じて「挑戦する勇気」や「仲間の大切さ」を得たと振り返った。特に、AI技術の活用法を学び、事業化に向けて具体的なアドバイスやサポートを受けたことが大きな影響を与えたと述べている。

 Women AI Initiative Japan(WAIJ)が主催する、女性起業家支援アクセラレーションプログラム「RAISE HER」の第1期生によるデモデイが開催された。この日、ステージに立ったのは全24名。AI技術を活用しながら、自らの原体験をプロダクトに昇華した起業家たちが、自信と情熱に満ちたピッチを披露した。事業化の段階は様々で、すでに事業を立ち上げ複数の企業と連携している人もいれば、まだ事業化に至っていない人もいたが、いずれも自身の経験や強みを生かしたアイデアを披露し、聴衆を感心させた。

 本記事では、イベントの概要、注目プロダクト、そして受賞者たちの声を通じて、「RAISE HER」が起こした変化をレポートする。

目次

プログラムの全体像:「RAISE HER」とは何か

 RAISE HERは、女性起業家によるAIスタートアップを支援するためのプログラム。WAIJが掲げるミッションは「女性のアイデアとAIの力で、社会課題を解決する」。このビジョンのもと、起業未経験の女性でもプロダクト開発・事業化に挑戦できるよう、4か月間にわたりメンタリングや資金支援が行われた。

デモデイの見どころ:個性と社会課題が交差するプロダクト群

 今回のデモデイでは、以下のように多様な分野にわたるプロダクトが登場。共通していたのは、「自分自身の課題・関心」を原点とし、AI技術を活用して社会の困りごとを解決しようという姿勢だ。

● 教育・キャリア支援系
STEM GATE:理工系女子のキャリア支援プラットフォーム
BeShift:AIでキャリア診断と習慣化を支援
KakerAI:研究成果をベースに授業を生成するAIツール

● 子育て・家庭向け
HuGlow:親子の自己肯定感を育む投稿アプリ
キラフル:夫婦関係改善を支援するアプリ
図書AI:近隣図書館の本をLINEと連携してAIが推薦

● 地域・観光・グローバル展開
DriVoice:AI音声観光ガイド
Omiisay:飲食店の海外展開支援プラットフォーム
InnoDrops:地方の人材育成支援

● その他の革新的プロダクト
肩代わり:部下育成を支援するAIツール
Edit:資産の活用をサポートするプラットフォーム
KnoVelo:タブやURLを効率管理するブラウザ拡張

 このような多様性こそが、RAISE HERの最大の魅力といえるだろう。

注目の受賞者たち:起業ストーリーに見る“挑戦”の本質

 数多くの登壇の中から、審査員が選んだ優秀プロダクトには以下の女性起業家たちが選ばれた。

●1位:渡邉 茜さん「推し活のスケジュール・タスク管理アプリ」

女性起業家とAIの挑戦が交差する瞬間…「RAISE HER」デモデイが示した未来への一歩の画像2
渡邉 茜さん(左)

 15年にわたる“2.5次元オタク歴”と生成AIの知見を活かし、ライブのチケット応募やグッズ管理、当落確認までを一元化できる「推し活管理アプリ」を開発。チケットの応募や当落確認、グッズ交換、ファンクラブ情報など、煩雑になりがちな推し活の情報管理をサポートすることを目的としている。

 渡邉さんは「自分の“困りごと”を、自分の技術で解決したかった」「RAISE HERで得たのは、挑戦する勇気と仲間の存在」と語る。現時点で事業化は考えていないとしつつ、まずは目の前の一人のファンを救うことを大切にしたいという。

●2位:平下 ひかるさん フラダンス振り付け自動解析アプリ「Hula Note」

女性起業家とAIの挑戦が交差する瞬間…「RAISE HER」デモデイが示した未来への一歩の画像3
平下 ひかるさん(左)

 14年間のフラダンス経験を背景に、動画から振り付けをキャプチャし、自動でノート化するアプリを開発。

「起業なんて自分には無理だと思っていた。でも、RAISE HERで“起業がリアルになった”」と語る平下さんは、育休中にプログラミングを学び、管理栄養士から一転、開発者に。フラダンスだけでなく、他のダンスや幼稚園のお遊戯会などにも応用できる可能性があると評価されており、多様な展開をみせる可能性もある。

●3位:河畑 えりさん 親が子どもの投稿にリアクションできるアプリ「HuGlow(はぐろう)」

女性起業家とAIの挑戦が交差する瞬間…「RAISE HER」デモデイが示した未来への一歩の画像4
河畑 えりさん(左)

 病気を経験し、自らの子ども時代を振り返ったことから誕生したプロダクト。

「子どもの自己肯定感の低さは、社会全体の問題。小さな褒め言葉を積み重ねたい」「RAISE HERで出会えた“共感し合える仲間”が何よりの財産」と河畑さんは語る。

 将来的には、情緒教育の第一人者として、世界中の子どもと親を支援するユニコーン企業を目指す。

●同率3位:南 恵子さん AI音声ガイド「DriVoice」

女性起業家とAIの挑戦が交差する瞬間…「RAISE HER」デモデイが示した未来への一歩の画像5
南 恵子さん(左)

 地方観光の課題に着目し、外国語が苦手なガイドでも質の高い案内ができるAIガイドを開発。地方観光の移動課題を解決するため、特定の条件を満たせば自家用車での送迎も可能とする観光マッチングサイトとも連動している。

「自分の地域の課題を解決したいという想いから生まれた」「自治体や観光協会と話す中で、応援してくれる人が増えた」と南さんは語る。宮崎から始め、全国へと展開を目指す。

終わりに:RAISE HERが生んだもの

「RAISE HER」は、単なる“起業支援”にとどまらない。参加者の多くが「挑戦する勇気」「仲間の存在」「共感の力」を挙げており、それは女性起業家に必要な「安心して飛び込める土壌」がまだ足りていないという裏返しでもある。

 このデモデイが証明したのは、「誰もが自分の課題から、社会を変えるサービスを生み出せる」という事実だ。AIはその背中を押すツールであり、起業は“選ばれた人だけの道”ではない。

 今後のRAISE HERの展開、そしてこれらのプロダクトの進化に、引き続き注目したい。

(文=UNICORN JOURNAL編集部)