●3つの“冷水”
そんな楽天、そして三木谷氏の快走に、昨年後半からいくつか水を差す事態も起こっている。
昨年7月2日、楽天は三菱UFJモルガン・スタンレー証券のアナリストを名指しで批判し「出入り禁止」にし、その事実をプレスリリースで公表するという前代未聞の措置を取った。出入り禁止にしたアナリストは外資系通信社が発表している「日本株アナリストランキング」のソフトウェア・ITサービス部門で1位になっている人物だったが、会社の意に反するレポートを出され、「このアナリストのレポートは、過去に発表されたものも含めて投資判断の一助にならないから、参考にしないよう『お勧めします』」とした。これを受け、精密小型モーターで世界トップシェアを誇る日本電産の永守重信社長は、7月23日の決算説明会で、「証券アナリストを養成するのも経営者の仕事だ」と苦言を呈した。
11月には、東北楽天イーグルスの日本一を記念して11月3日から7日まで実施した優勝記念セールで問題が起こった。星野監督の背番号77にちなんだ「77%引き」を大々的に売り物にしたセールだったが、17の店舗が値引き前の値段を実勢価格より大幅につり上げて、77%割り引いたように見せかけていた。この不当表示が明らかになった際、三木谷氏は「正式な日本一セールは厳正な審査をした。便乗して勝手にセールスをやった店があった」と発言し「責任逃れ」との批判を浴びた。
加えて同月には、産業競争力会議の民間議員辞任・撤回騒動を起こした。11月6日に、一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売が政府の新ルールで全面解禁にならなかったことに腹を立てた三木谷氏は、「立法化されるなら司法の場で国と争うことになる」と真っ向から対立。「産業競争力会議の民間議員を辞任する」と表明したが、同月18日、首相官邸で安倍首相と面会後に態度を軟化させて辞意を撤回。一部から「規制緩和のお題目を唱えながら、楽天の医薬品ネット通販子会社、ケンコーコムの利益を守るためだったのか」との批判を浴びた。
こうした冷水をはねのけ、楽天は「インターネット業界の雄」としての立場をいっそう強固にしていくことができるのか。今後の同社の動向から目が離せない。
(文=編集部)