「生成AIの衝撃はデータベースの発明以上」損保DXを牽引するガイドワイアが見据える保険ビジネスの未来

世界 43 カ国で 570 社以上の損害保険会社に利用され、損保業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引するプラットフォームプロバイダー「Guidewire Software」(以下、ガイドワイア)が5月19日、都内で年次カンファレンス『Guidewire インシュアランスフォーラム 東京 2026』を開催した。
AI とテクノロジーの急速な進化により、損保業界を取り巻く環境は急激に変化している。保険システムは従来の「基幹システム」を超え、AI を活用しながらビジネスのスピードと柔軟性を高める統合クラウドプラットフォームへの進化が求められる。
米国カリフォルニア州サンマテオ市に拠点を置くガイドワイアは2008年の日本法人設立以来、国内大手損害保険会社10社以上にシステムが採用され、国内総収入保険料(GWP)の 60%以上が同社の保険金支払い管理プラットフォーム「Guidewire ClaimCenter」上で稼働する実績を持つ。
フォーラムでは、同社の米国本社CEO、マイク・ローゼンバウム氏が登壇して、AI とテクノロジーがいかにして保険業務を高度化し、顧客中心の新たな体験を生み出すのか、その可能性と今後の方向性を探る内容について、基調講演を行った。
生成AIの登場が保険業界にも巨大なインパクトを与える

ローゼンバウム氏は同社のビジョンについて「世界中の損害保険業界の皆様が、顧客とつながり、新商品を投入し、効率的に事業を成長させるための『プラットフォーム』を創り上げること」と紹介する。現在、すでに140社以上の保険会社が「Guidewire Cloud」で稼働しており、コアシステムをクラウドへ移行する絶好のタイミングを迎えていると述べ、「生成AIの登場は『データベースの発明』以上に、保険業界に巨大なインパクトをもたらすと確信している」と力を込める。
ガイドワイアは現在、引受、損害サービス(保険金支払)、カスタマーサービスなどに特化した「AIエージェント」を自社開発し、プラットフォームに組み込んでいる。ローゼンバウム氏は同社の損害保険特化型AIアシスタント「ProNavigator」の活用についても「AIの導入は、効率化やコスト削減だけが目的ではありません。AIを活用して『世界トップレベルのカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)』を創出することこそが真の目的」と位置付け、AIを使ったシステムへの早期の移行を促した。
保険業界の変わらない本質を守り抜くためにこそAIの導入が急務

会場ではガイドワイアの日本法人代表を務める江端美幸氏も登壇し、例えば保険代理店が顧客から「アルファロメオの自動車保険の見積もりがすぐに欲しい」と電話を受けた際の、同社のシステムを使った対応が寸劇で紹介された。
自動車保険の見積もりを依頼されると、従来は代理店システムを開いて一つ一つ手入力で、必要な情報を調べていたが、AIを使うと、チャットインターフェースに「山田さんの自動車保険(アルファロメオ)の見積もりを取りたい」と自然言語で入力するだけで、AIが契約管理システム「Guidewire Policy Center」から顧客の過去の契約データを引っ張り出し、「アルファロメオは盗難が多いので車両保険を付けたほうがよい」といった提案を迅速に行ってくれる。

江端氏はこれを「チャットGPTなどのAIツールが自然に浸透した『保険業務の将来の1つの姿』」と話す。「これまでのオンプレミス型では難しかった機能も、クラウドに移行することで、フロントエンドと保険会社の基幹システムがAIを介してシームレスに使える世界が見えてきています。こうした世界を、日本の保険会社の皆様と一緒に築いていきたい」と呼びかける。
また、江端氏は「不易流行」という松尾芭蕉に由来する日本の古い言葉を引用し、「社会インフラとして安心・安全を届け、高いコンプライアンスを維持するという保険業界の『変わらない本質(不易)』を守り抜くために、業務プロセスやシステムといった『やり方(流行)』をスピーディに刷新していく必要があります」と述べ、「日本は私たちにとって極めて重要な市場。ただのシステム屋ではなく、堅牢性とアジリティの両輪でお客様の変革に伴走するパートナーでありたいと強く思っています」とAIを使ったシステム移行の重要性を説いた。

江端氏に続き、同社最高製品開発責任者のディエゴ・デヴァレ氏も壇上に上がり、ガイドワイアの社員たちと共に、AIの力を借りて、火災保険の「積算情報画面」を新たに作成するデモなどを紹介した。
デヴァレ氏は「私たちのプラットフォームは、数年がかりの巨大なプロジェクトとしてシステムを導入する従来の手法から、週に1~2回本番環境へデプロイできる『安全でアジャイルなアプローチ』へと完全に進化した」と自信を見せる。「日本の損害保険の深い知識がない開発者でも、AIアシスタントの支援によって数時間以内で迅速な対応ができる『全く新しい働き方』が実現したのです。これは、我々はもちろん、パートナー様やお客様の開発スピードに革命をもたらします」と話す。

ガイドワイアのシステムを使った事例も紹介
会場ではMOTER Technologies、CSAA社など国内外のガイドワイア顧客による事例セッションも実施された。「CSAA Insurance Groupエグゼクティブバイスプレジデント 兼 CIOのブラッド・ロンツ氏は「お客様ファーストの保険モデル:CSAA Insurance Groupに学ぶ顧客サービス革新と持続的成長戦略」をテーマとしたセッションを行い、クレーム対応時に「SAM(Smart Assistant for Me)」と呼ばれる社内の特化型AIアシスタントを活用していることを紹介した。
ロンツ氏は初期事故報告(FNOL)の電話を受ける際、SAMが裏側で通話を音声認識してテキスト化し、アジャスター向けに常に一貫したフォーマットで内容を自動要約する機能があることを紹介した。画面の『インサイトを確認』ボタンを押せば、例えば『怪我人がいる』といった、アジャスターが特に注意を払うべきポイントをAIが即座に教えてくれるといい、「これにより、コールセンターの担当者は、事故直後で動揺している会員の言葉を必死にタイピングして画面に入力する作業から解放され、会員の話に耳を傾け、心から共感することに100%集中できるようになるのです」と話す。
同社は高いレベルで「共感的なクレーム対応サービス」を提供しようとする試みを徹底しているとも述べ、「保険において、信頼は『最も重要な瞬間』、すなわちクレーム(保険金請求)の時にこそ獲得されます。私はこれを『真実の瞬間(moment of truth)』と呼んでいます」と自社のこだわりを明かす。
同社はコールセンターなどを利用の際、コミュニケーションによる摩擦をなくし、事故などのストレスの多い状況下では、非同期のデジタルエンゲージメント(SMSやテキストメッセージ)へのニーズが高まっていることに着眼したと述べ、現在、このSMS通信機能にガイドワイアの「Marketplace」のソリューションを活用していると話す。
「企業保険向けのカスタム連携やAIプラットフォームの統合は『Guidewire Integration Gateway』を使用して迅速に実装しました。これらはすべて『Guidewire Cloud Platform』上で稼働しているため、ビジネスの成長に合わせて各コンポーネントを自由かつ安全にスケールさせることが可能です」(ロンツ氏)

2021年に設立されたMS&ADインシュアランスグループのスタートアップ「MOTER Technologies社」の竹田俊輔氏も「ソフトウェアを起点とする保険ビジネスの変革:30日で実現するデジタル保険」をテーマにセッションを行い、ガイドワイアのシステムを自社のシステムに導入した経緯を振り返る。
「世の中の車はハードウェアからソフトウェアへと変わっていく『SDV(Software Defined Vehicle)』の時代を迎えています。我々のビジョンは、将来すべての車に我々のソフトウェアが搭載され、そのデータを使って商品やサービスを提供することですが、そのためには柔軟なプラットフォームが不可欠です。そこで我々は『ワンストップショッププラットフォーム』を構築し、そこにガイドワイアのシステムを導入したのです」(竹田氏)

数年前、ニュージーランド法人の責任者時代に、竹田氏はAPAC(アジア太平洋地域)で初めてGuidewire Cloudをフルスイートで導入したという。当時、ニュージーランドに3種類しかなかった自動車保険について、「ガイドワイアの製品開発ツール『APD(Advanced Product Designer)』を使うことで、短期間で50種類もの商品バリエーションを作成でき、結果として4年間で売上・利益を5倍に伸ばすことができた」と振り返る。この経験によって、竹田氏は、環境変化に合わせて「商品を多様化すること」の重要性と、それを支えるプラットフォームの力を実感したという。
また、竹田氏は「我々が目指す『将来の事故対応の究極の形(北極星)』は、『事故が起きても、お客様が電話すらしないで保険金の支払いが完結する』という世界だ」と述べ、「ガイドワイアをはじめとするテクノロジーを活用し、日本や世界の保険会社様と共に、この未来を実現していきたい」と話していた。
(取材・文=名鹿祥史)
※本稿はPR記事です。





