人気外食Green’s K、なぜ成功?常識破りのブルーオーシャン戦略で“非”顧客を獲得
メガバンク勤務後、アメリカのビジネススクールでMBAを取得し、今では幅広い企業の戦略立案やマネジメント教育に携わる安部徹也氏が、数多くのビジネス経験やMBA理論に裏打ちされた視点から企業戦略の核心に迫ります。
アベノミクスで外食産業にもようやく日が差してきましたが、まだまだ消費者の節約志向も根強く、多くの企業が苦戦を強いられる中、客の行列が絶えないレストランもあります。
たとえば、全国に11店舗展開(1月時点)されている鉄板ビュッフェ「Green’s K」。
このレストランの売りは、店舗や時間帯によって価格は違いますが、自分の食べたいものが好きなだけ食べられるバイキング形式で、価格がわずか770円というところ。普段は節約志向から外食を敬遠する顧客を呼び込んで、成功を収めているといえるでしょう。
Green’s Kがそんな低価格で客にとっての価値の高い料理を提供して成功を収めた背景には「ブルーオーシャン戦略」があります。この戦略は、世界的に著名なフランスのビジネススクールINSEADのW.チャン・キム教授とレネ・モボルニュ教授が体系化した新しい経営戦略で、ライバルとの競争を意識せずに、これまで業界が見過ごしてきた非顧客に光を当て、新たな市場を切り開いていく戦略です。
ライバルとの激しい競争に明け暮れるレッドオーシャン市場と対比して、悠々と広大な海原をなんの邪魔もなく進むさまを表して「ブルーオーシャン戦略」と名付けられました。2005年に出版された『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する』(W.チャン・キム、レネ・モボルニュ/ランダムハウス講談社)は世界中でベストセラーとなり、日本ではヘアカットのQBハウスが成功事例としてケースに取り上げられています。
今回は、「Green’s K」が、どのような戦略で新たな市場を切り開いていったのかを分析していきます。
●既存ライバルとの真っ向勝負を避ける
通常、外食産業ではおいしさを追求するか、もしくは低価格で訴求するかの戦略が取られます。つまり、成功を収めるためには、フレンチレストランなど高級レストランの差別化戦略か、吉野家やマクドナルドなど大規模チェーンレストランの低コスト戦略のいずれかを採用するということになるのです。
ただ、おいしさを追求したり、低価格を追求したりすれば、おのずとライバルとの激しい競争に勝ち抜かなければならなくなります。特に、業界の新参者が、おいしさにおいて有名レストランに勝つことは難しいでしょうし、価格面において全国展開するフランチャイズレストランに勝つことは難しいでしょう。