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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第3回

人気外食Green’s K、なぜ成功?常識破りのブルーオーシャン戦略で“非”顧客を獲得

【この記事のキーワード】

 ですから、既存のライバルと真っ向勝負するのではなく、独自の道を切り開き、市場を開拓する必要があるのです。

 競争のない市場を切り開くブルーオーシャン戦略では、核になるコンセプトに「バリューイノベーション」があります。バリューイノベーションとは、顧客にとっての価値を高めると“同時”に、低コスト化を進めていくという、これまでの常識を打ち破る考え方です。

 従来、競争を優位に展開するためには差別化か低コストかを選択し、突き詰めていく必要がありましたが、バリューイノベーションではトレードオフの関係にあるとされていた差別化と低コスト化を“同時”に実現していくのです。

●アクションマトリクス

 このバリューイノベーションを実現に導くための一つのフレームワークとして、「アクションマトリクス」があります。

 アクションマトリクスには「取り除く」「減らす」「付け加える」「増やす」の4つの要素があり、業界の常識にとらわれずに自社の活動を見直すことによって、バリューイノベーションを起こし、顧客にとっての価値が飛躍的に高まることにつながっていきます。

人気外食Green’s K、なぜ成功?常識破りのブルーオーシャン戦略で“非”顧客を獲得の画像2Green’s Kのアクションマトリクス(筆者作成)

 たとえば、Green’s Kではコストのかかる外部からの食材仕入れを「取り除いて」います。というよりは、運営母体が全国で業務スーパーを展開する神戸物産であり、自社スーパーで販売する食材を利用することにより、食材の原価率を大幅に削減することができるのです。

 また、各テーブルに鉄板を「付け加える」ことにより、自分で好みの食材を選び、自由に料理をすることができます。これは顧客が自分で好きな料理をつくるという「体験型消費」として、満足度向上にも大いにつながっているといえるでしょう。

 加えて、顧客が自分で料理することにより、厨房での人員を「減らす」こともできますし、このGreen’s Kでは、食べ終わった後の食器は自分で片付けるシステムを導入し、ウェイターやウェイトレスなどの人員も「減らし」て、顧客満足を損なわないかたちでコスト削減に努めているのです。

 Green’s Kは、このようなアクションマトリクスに基づく活動で、顧客価値を高めながら、770円という低価格を実現し、飛躍的な顧客満足度向上に成功して人気を博しているといえるでしょう。

 ビジネスは確かに競争という側面はありますが、差別化された商品、もしくは低価格を追求して激しい競争の中に自ら飛び込んでいけば、たとえ勝ち残ったとしても相応のダメージを覚悟しなければなりません。

 ただ、どんな業界であれ、顧客と非顧客の規模を比べれば、圧倒的に非顧客のほうが多いことは間違いないでしょう。

 そこで、業界で見過ごされた市場の“非”顧客をどう取り込んでいくかを考え、バリューイノベーションを起こすことにより、競争を意識せずに顧客に支持されるビジネスが展開できるようになるのです。
(文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO)

人気外食Green’s K、なぜ成功?常識破りのブルーオーシャン戦略で“非”顧客を獲得の画像3
●安部徹也(あべ・てつや)
株式会社 MBA Solution代表取締役CEO。1990年、九州大学経済学部経営学科卒業後、現・三井住友銀行赤坂支店入行。1997年、銀行を退職しアメリカへ留学。インターナショナルビジネスで全米No.1スクールであるThunderbirdにてMBAを取得。MBAとして成績優秀者のみが加入を許可される組織、ベータ・ガンマ・シグマ会員。2001年、ビジネススクール卒業後、米国人パートナーと経営コンサルティング事業を開始。MBA Solutionを設立し代表に就任。現在、本業に留まらず、各種マスメディアへの出演、ビジネス書の執筆、講演など多方面で活躍中。主宰する『ビジネスパーソン最強化プロジェクト』は、2万5000人以上のビジネスパーソンが参加し、無料のメールマガジンを通してMBA理論を学んでいる。

BusinessJournal編集部

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