ニコンのメガネレンズ80周年、なぜ能楽堂で記念イベントを開いたのか

●この記事のポイント
ニコン・エシロールは2026年10月22日、ニコンメガネレンズ発売80周年記念イベントを国立能楽堂で開催。424人が同時にレンズ入りメガネを着用し、ギネス世界記録を達成した。距離で見え方が変わる画像の展示や、能面の表情の解説、能『黒塚』の鑑賞を通じ、「見る」ことの楽しさとメガネレンズの役割を伝えた。
2026年10月22日、ニコン・エシロールは、ニコンメガネレンズの発売80周年記念イベントを国立能楽堂で開催した。
会場では、参加者が一斉にメガネを着用するギネス世界記録への挑戦を行った。さらに、見る距離によって異なるイメージが浮かび上がる画像の展示や、能楽の解説・体験、狂言と能の鑑賞も実施。一連の企画を貫いていたのは、「見え方が変わると、体験が変わる」という考え方だった。
光学技術を生かしたメガネレンズと、長い歴史を受け継ぐ伝統芸能。一見すると意外な組み合わせだが、そこには「見る」ことの豊かさを捉え直す接点があった。
●目次
ニコンのメガネレンズ80年の歩み

冒頭、ニコン・エシロールの梶原望社長が、ニコンのメガネレンズの歩みを紹介した。ニコンと聞けばカメラを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、梶原氏によれば、戦後にニコンが消費財として本格的に世に送り出したのは、カメラよりも先に発売したメガネレンズだったという。
1946年の発売以来、80年にわたって取り組んできたのは、光学メーカーとしての技術と品質を生かし、一人ひとりの「見える喜び」を支えるレンズづくりだという。
梶原氏は利用者や関係者への感謝を述べるとともに、単に見えるだけでなく、その先にある「見ることを楽しむという豊かな価値」を届けたいと語った。その思いに触れてもらう機会として用意されたのが、能楽をはじめとする、この日の体験だ。
会場には、見る距離によって街並みにも人物像にも見えるハイブリッド画像も展示され、同じものでも見方によって印象が変わることを体験できた。

一斉にメガネを着用し、424人でギネス世界記録を達成
イベント前半では、参加者が「同時にレンズ入りメガネを着用した最多人数」のギネス世界記録に挑戦した。達成に必要な基準人数は250人と説明された。
普段は何気なく行う「メガネをかける」という動作も、世界記録への挑戦となれば特別なものになる。リハーサルで手順を確認する参加者の様子からは、記録達成への期待と、合図に合わせて一斉に動く緊張感が伝わってきた。
本番では、参加者が一度メガネを外して膝の上に置き、公式認定員の合図で一斉に着用。そのまま終了の合図まで30秒間かけ続けた。

その後の結果発表では、ルールに沿って参加したと認められた人数が424人となり、ギネス世界記録の達成が告げられた。

「見方」を知ることで増える発見
「見方」によって体験が変わることを示したのが、シテ方金春流能楽師・中村昌弘氏による解説と体験だ。
無表情の象徴のように捉えられがちな能面も、角度を変えるだけで、悲しげにも、笑っているようにも見える。中村氏は、目と口元のどちらに注目するかによっても、表情の印象が異なると説明した。
同じものでも、見る側の視点によって気づくことが変わる。その違いを、能面を通して確かめる時間となった。

舞台上では、一部の参加者が構えやすり足を体験。さらに、能面を実際に着け、視界の狭さを確かめる場面もあった。周囲や足元が見えにくいことに、体験者からは「思った以上に視野が狭くて、驚きました」との声が上がった。

「見る」ことの豊かさを支えるメガネレンズの役割
解説と体験の後には、狂言と能『黒塚』が上演された。能面の表情についての解説や、構え・すり足の実演を踏まえて舞台に向き合うと、演者の顔の角度や足の運びにも目が向く。
どこに注目するかによって、同じ舞台から受け取るものも変わることを実感した。

鑑賞後、梶原氏は自身も初めての体験だったと明かし、「最後まで釘付けになって鑑賞させていただきました」と振り返った。
テレビ、パソコン、スマートフォンなどの普及によって、「見る」対象や距離、時間は多様化している。そのなかで、同社はニコンのメガネレンズを通じて、一人ひとりに適した見え方を追求してきたとしている。
単に見えるだけでなく、そこから何かに気づき、楽しめること。国立能楽堂での一日は、そうした「見る」ことの豊かさと、それを支えるメガネレンズの役割に、改めて目を向ける機会となった。
(取材・文/福永太郎)
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