野村HDは、前回の業務改善命令の際には情報を漏洩させた社員の解雇を含め17人処分したが、今回も2人を退職処分にした。同社の営業担当者による公募増資情報の漏洩は、顧客サービスの一環として日常的に行われていた。東京株式市場は、外国人投資家の目からは「インサイダー天国」と見られている。
●FHFAからの提訴、和解金に関心集まる
そんな中、市場関係者が最も注視しているのが、米連邦住宅金融局(FHFA)に支払う和解金がいくらになるかという点だ。
FHFAは11年9月、世界の17の金融機関が、監督下のファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)に対し、合計1960億ドル相当の高リスクな住宅ローン担保証券(MBS)を情報をきちんと開示をせずに4年間にわたり販売していたとして、裁判所に提訴した。この17社のうちの1社が、野村HDの米国法人だ。
13年に入り、FHFAと金融機関との和解が相次いだ。和解金は米シティグループが2億5000万ドル(約250億円=1ドル100円で換算。以下同)、ゼネラル・エレクトリック(GE)は625万ドル(約6億円)、アライ・フィナンシャルが4億7500万ドル(約475億円)、ドイツ銀行が19億ドル(約1900億円)だった。
最高額は米金融大手JPモルガン・チェース。MBSを330億ドル分販売したとしてFHFAに提訴されていたが、昨年10月、51億ドル(約5100億円)の和解金を支払うことで合意した。ただしFHFAへの支払いは、政府機関と暫定的に合意している130億ドル(約1兆3000億円)の和解金の一部とみられている。
野村HDの米国法人がFHFAから提訴されている額は20億ドル(約2000億円)。どのくらいの和解金になるのかに関心が集まるが、参考になるのがスイスの金融大手、UBSのケースだ。45億ドル(約4500億円)の販売額に対して和解金は8億8500万ドル(約885億円)だった。割合は約2割。この比率を野村に当てはめれば4億ドル(約400億円)相当になる。
現在の野村HDにとって、400億円の和解金は決して小さくない。一連のインサイダー不祥事を乗り越え、業績が上向き、完全復活に向け大事な1年を迎えた同社にとって、大きな頭痛の種のひとつといえよう。
(文=編集部)