2000年代からマンションのダイア建設、スーパーの長崎屋、人材派遣会社のラディアホールディングス(旧グッドウィル・グループ)など経営不振に陥った日本企業に次々と出資するようになった。このなかでも、あおぞら銀行、西武HD、国際興業が大口の最重要案件だった。
経営危機の企業を安値で買い、企業価値を上げて高値で売り抜ける、いわゆる「ハゲタカファンド」という呼び名が定着したきっかけは、あおぞら銀行への投資だった。
日本債券信用銀行が98年に経営破綻し、00年にソフトバンク、オリックス、東京海上火災保険(現東京海上ホールディングス)を中心とする企業連合に譲渡され、普通銀行として再出発したのが、あおぞら銀行である。サーベラスは03年、ソフトバンクが保有していたあおぞら銀行株式を1000億円で取得。06年11月に、あおぞら銀行が再上場する際に保有株の一部を売り出し、サーベラスは1390億円の資金を回収した。1000億円の投資で390億円の利益を上げた計算だ。
09年に、あおぞら銀行と新生銀行の経営統合計画が浮上。10年5月に新生銀行側の事情でこれが破談となり、あおぞら銀行の残りの保有株を高値で売り抜けるチャンスを逸した。
13年1月7日、サーベラスはあおぞら銀行の株式、最大6億3250万株を売り出すと発表した。売り出し価格は231円。サーベラスに1460億円が転がり込んだ。同年8月、残りの株式を300億円でバークレイズ証券に売却した。
1000億円を投資したあおぞら銀行では、ざっと計算して3150億円を回収したことになり、投資効率は非常によかったが、西武HDではあおぞら銀行のようにうまくいかなかった。投資額は1200億円だが、西武HDの再上場でどのくらい回収できるか注目される。あおぞら銀行のような大きな儲けにはなりそうもないというのが、アナリストの見方だ。
国内の大型案件から相次いで撤退するのは、サーベラスの米国本社と日本法人の関係が悪化しているからだという指摘がある。西武HDの株主総会で、上場問題をめぐり対立が表面化したときには日本法人の幹部が前面に立っていた。その後、西武HDと上場時期で合意し、国際興業からの撤退を決めたのはニューヨーク本社だったといわれている。
ひとまず日本から撤退し、その後の日本案件発掘に関しては、新たな責任者を決め、新体制で臨むことになるとの観測が金融業界に広まっている。
(文=編集部)