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経済学的にいうと、労働力の売り買いには「情報の非対称性」があるのだ。そして、経営者・上司の側は、「定額のコストの下で」、労働者が目一杯に働いて出る成果を要求水準とする「インセンティブ(誘因)」を持っている。
「労働時間と成果は関係ない。成果に基づいて報酬を払うのがフェアだ」という意見を正論と認めるなら、例えば規定時間よりも少ない時間で仕事を済ませて定額の報酬をもらえる人が半分くらいいれば、フェアといえるだろう。だが、「評価する側」が経営者・上司であるなら、今回検討されている「残業代ゼロ・ルール」は、「ブラック的」な企業の利益を後押しするものになるだろう。時間当たりの賃金を値切って、長時間働かせるために利用されそうだ。経済的なロジックで考えると、あまり筋のいい提案ではない。
雇用制度の規制緩和は日本経済の活性化にとって大変重要だ。産業競争力会議は、「残業代ゼロの拡大」といった横道にそれるのではなく、会社都合解雇の労使双方にとってフェアな金銭補償ルールの確立に集中的な努力を傾けるべきだ。
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