縮小する結婚式市場、日本一に急成長した情報サイトの秘密 理念共有優先の超アナログ経営
■契約会場の推移(2009年5月~14年4月)
「ウエディングパーク」は業界でいち早くクチコミシステムを導入し、式場の評判をユーザーの書き込みで見られるようにした。現在では40万件を超えるクチコミのデータ蓄積があり、他社に比べて圧倒的な情報量である。
この事実だけを見れば、最先端のIT技術が成長の要因に思えるだろう。もちろん、それもウエディングパークが成功した理由の一つだが、最大の理由が別にある。それは、IT企業という表の顔からはまったく想像もできない“超アナログ経営”である。それこそ「ビジョナリー・カンパニー」の真骨頂だ。理念とビジョンの共有を再優先とし、社員の団結力を優先させる経営である。
●成長の要因は、社員の意識共有
同社の日紫喜誠吾社長は、日本一にまで成長した要因を次のように語る。
「3つの要因があったと思います。一つは、組織カルチャーの強化。もう一つは、全国営業直販モデル、そして経営者人材を育てたことです。とりわけ組織カルチャーの強化が当社を日本一にさせた要因だと思います」
ウエディングパーク社には、ビジョン、経営理念、行動規範が明確に設定され、社員全員がすべて頭に入れている。それは強制されたものではなく、社員が自然に共有する組織風土が醸成されている。
少し長くなるが、ウエディングパークのビジョン、経営理念、行動規範を見てみよう。
ビジョンは「21世紀を代表するブライダル会社を創る」
経営理念は「結婚を、もっと幸せにしよう」
行動規範は「TRUTH」という小さな赤い小冊子にまとめられている。そこには「幸せのための9つのピース」とした9つの行動規範が記載されている。
「TRUTH」は、社員全員が常に携帯し、9つの規範の中からお気に入りの1つを選び、それを日常の行動のベースとしている。
行動規範を手帳に印刷し社員に暗唱させる会社はどこにもある。しかしウエディングパークのそれはまったく異なるものである。
経営本部の瀬川由絵さんに「TRUTHをいつも持っているのですか?」と尋ねると、「はい。私が好きなのは“憧れになる”です」と嬉々として答えてくれた。他の社員にも同様の質問をすると、「私は“永遠のフェア”をモットーにしています」など、同様に楽しそうに答えた。
筆者はビジネスプロデューサーという職業柄、多くの企業と出会ってきているが、社員が行動規範を嬉々として答えるのは極めて希なケースである。これだけでも、いかに社員が理念を共有し、自分の仕事に誇りを持っているかがわかる。
ウエディングパークでは、毎朝9時に朝会を行い、社員の1分間スピーチの後、日紫喜社長のスピーチを行い、全員で円陣を組んでから一日をスタートさせるという。「理念や組織づくりに関する大切なメッセージ」を社長自ら意識し“言葉”によって伝え続けているという。
この何気ない朝の習慣によって会社の理念が浸透し、同じビジョンを共有することになっていると日紫喜社長は言う。この習慣を創業初期から続けているという。
継続は力なりというが、理念を共有する習慣の継続が、この会社のパワーを維持しているといえる。