アマゾンの新スマホは、なぜ脅威なのか?一機能に秘められた「検索の王者」への野望
●「検索の王者」への道
ポイントは、そのような購買行動をする消費者層がどれくらい増えるのか? そしてそのように購買行動が変わると、消費額がどれくらい増えるのか? という点だ。
仮に、そのような消費者が多く、かつ消費額も大幅に増えることが証明されれば、ファイアフライは大化けする。なぜなら、そのことだけを証明できれば、あとはファイアフォンが売れなくても、ファイアフライをアプリとして普及させれば、アマゾンはグーグルの代わりに「検索の王者」になれるからだ。
実際、電子書籍のデファクトになりつつあるアマゾンのタブレット「キンドル」も、タブレットとしてのシェアは2%程度にすぎない。だが、アプリとしてのキンドルが普及しているおかげで、誰もが電子書籍といえばキンドルを使うようになっている。それと同じ構図を実現できれば、アマゾンにとっては成功といえる。
念のために強調しておくと、ECサイトとしての売り上げが増えるだけを出口と考える必要はない。ECサイトの売り上げも増えるが、他のECプレイヤーやオークション出品者に対して、グーグルのように送客課金をすることもアマゾンにはできるようになるわけだ。
●あえて高価格セグメントを選んだ理由
では、ファイアフライが消費者にとって有効かどうかを証明するには、どうすればいいのか?
そのためにまずは、消費好きで消費額が多い消費者セグメントに絞って、そこでファイアフライがどれほど使われるかを確認すればいい。高機能で高価格セグメントのスマホを販売すれば、逆説的に、あまり消費におカネをかけない、検証にはノイズとなる消費者層を足切りすることができる。そう。ここで戦略思考としては、割高で普通の人からは「売れるとは思えない」商品設計をした意図がなんだったのかという点に、思考ループが戻るのである。さすがはアマゾン、グーグルやアップルに対抗できる第三勢力のリーダーである。
ところで蛇足だが、「街中で気に入った女の子を見つけたら、フェイスブックで友達申請できるフェイスブックスマホが発売されればいいのに」と、筆者は今回のファイアフォン発売の記者発表を見て思ったことも付け加えておく。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)