また、株主配当なしの無配にもかかわらず1億円以上の役員報酬を支払った企業は日本板硝子、日本通信、栄電子、シャクリー・グローバル・グループ、オリンパスの5社。赤字かつ無配の日本板硝子は4人に1億円以上の役員報酬を支払ったが、日本人役員2人は昨年の株主総会で取締役を退任しており、積み立てられていた退職慰労金の分だった。
●日本板硝子、グローバル企業への転換頓挫で赤字、無配
日本板硝子による英ガラス大手ピルキントンの買収は、海外企業買収の失敗例として取り上げられることが多い。同社は06年6月に6160億円を投じ、年商規模で2倍のピルキントンを買収した。「小が大を呑む」と産業界を驚かせた。日本板硝子の当時の海外売り上げ比率は20%程度だったが、この買収で売り上げ、従業員数ともに80%が海外というグローバル企業に大変身した。
買収の立役者は藤本勝司社長(当時)だ。藤本氏は2人の外国人社長を招いたが、相次いで辞任し、経営が混乱した。日本板硝子は買収後、経営を全面的にピルキントン側の外国人に託す戦略を採り、「日本人(の役員)には外国人をコントロールできる人材がいない」として経営を丸投げした。加えて、実権の線引きが十分ではなかったため、日本板硝子側とピルキントン側の衝突が起こり、ピルキントン側から就任していた社長が早々に退任するという事態に発展した。
日本板硝子はピルキントン買収で買収額の約8割を転換社債など外部資金で賄ったが、転換社債の償還期限が迫ってきても資金がなかった。昨年3月、メインバンクの三井住友銀行が主導する銀行団から協調融資を受けて、ようやく資金ショートの危機を乗り切った。結局、銀行から協調融資を受ける代わりに、ピルキントン買収を主導した藤本氏は昨年3月31日に会長を辞任し、同年6月の株主総会で取締役を退任した。
ちなみに藤本氏はピルキントンとの買収交渉を進めている最中の05年11月、結露防止のエコガラス「真空ガラススペーシア」のイメージキャラクターに、娘でタレントの千秋を起用したが、東証1部上場企業トップとしては異例の振る舞いに対し、批判が上がった。その藤本氏は昨年度、1億1100万円の役員報酬を得ていたが、日本板硝子は「07年6月の役員退職慰労金制度廃止までの期間に積み立てられた退職慰労金の支払い」と説明している。
グローバル企業への転換につまずき、赤字、無配が続く日本板硝子の株主総会が6月27日に開催されたが、吉川恵治社長の取締役選任への賛成票割合は85.69%と低かった。