近年、立ち食い形式の飲食店が増加している。立ち食いそば屋や立ち飲み屋は一般的になっているが、そばや酒以外のメニューをメインにした立ち食い飲食店がブームになっているのだ。
そのブームを牽引する代表的な飲食店といえば、ブックオフコーポレーション創業者である坂本孝氏が代表を務める俺の株式会社が展開する「俺のイタリアン」や「俺のフレンチ」などの「俺の」シリーズだろう。2011年9月に「俺のイタリアン」の第一号店が東京・新橋にオープンし、その後「俺の割烹」や「俺のやきとり」などさまざまな立食型の飲食店をオープン。現在では「俺の」を冠する飲食店は全27店舗にまで上る。これらの店舗は、一流シェフの料理をリーズナブルに味わうことができるということで大いに話題になった。
少し時は遡り、09年7月には立ち食い焼肉店「六花界」が東京・神田にオープン。同店は2.2坪という非常に狭い物件で、肉を焼くための七輪も2つしかないので、客同士が七輪をシェアしなくてはならない。さらに店員が注文されたものを運べるほどのスペースがないので、客がリレー方式で肉を運ぶ。しかし、それによりおのずと客同士での交流が増え、「出会いのある焼肉屋」として評判となった。もちろん、おいしい肉を安価で食べられることも人気の秘訣だ。
●従来の飲食店では不可能とされた原価率50%
では、立ち食い形式にするメリットとはなんなのだろうか?
そこで、12年11月にオープンした立ち食いピザ店「ピッツァサルーテリア」東京・錦糸町店のオーナーに話を聞いた。
「皆さん“日本のピザは高い”という固定観念があると思います。そこで、ナポリ風ピザを低価格で提供することで気軽に食べられるようにしたい、と思いました。しかし、大きな設備投資をしてしまうとピザの価格に転嫁しなくてはならなくなります。小さな店舗、小さなスペースを前提に企画を進め、立ち食い形式であれば成立するだろう、と考えたんです。立ち食いならば1人分のスペースがコンパクトに済むので、お客様もたくさん入れますし、回転率も上がります。ランチの時間帯であれば、5分程度でピザを食べて退店されるお客様もいらっしゃいます」
同店では、ピザを380円から味わうことができる。つまり、回転率を上げて利益を生むことで、ピザを低価格に抑えることを実現したわけだ。
「飲食業界では原価率を30%程度に抑えるべきだといわれていますが、強力粉や薄力粉、チーズなどの食材にこだわった結果、50%ほどになってしまったのですが、立ち食い形式だからこそ経営が成り立っているのです」
安さだけではなく、素材にもこだわっているようだ。つまり、コストパフォーマンスが非常に高いといえ、それは客側にとって大きなメリットである。
●立ち食い形式で、売り上げが7.5倍に
また、「ペッパーランチ」などを展開しているペッパーフードサービスは、13年12月に立ち食いステーキ店「いきなりステーキ」を東京・銀座にオープン。立ち食いステーキ店という聞き慣れない業態であるが、なぜオープンに至ったのだろうか。その理由をペッパーフードサービス広報の川野秀樹氏は次のように語る。