「弊社では『ステーキくに』という、1グラム10円のオーダーカットステーキが人気の飲食店を展開しております。そんな中、社長の『このステーキを半額で提供してみたい』という発想と『ステーキは前菜等なしで、いきなり食べるのが本当はおいしいんだ』という思いが『いきなり!ステーキ』の誕生につながったのです。立ち食い形式にして回転率を上げ、メニューをステーキ、そしてサラダとライスに絞り込んでオペレーションと人件費の負担を軽くすることで、『ステーキくに』と同じ肉を半額で提供できるようになりました」
「ステーキくに」同様、コックが肉を炭で焼いており、ステーキの品質には徹底的にこだわっているそうだ。来店客は1日に400~500人ほどで、経営は順調だという。
「東京スカイツリーの近くに弊社が経営している別の飲食店があったのですが、苦戦しており、売り上げが月200万円程度でした。それを『いきなり!ステーキ』にリニューアルしたら、1500万円にまで伸びました。銀座以外での立地でも成功したことで、年内で30店舗に増やすことを目標にしています」(同)
まったく同じ場所でも、業態を変えることで売り上げが7.5倍になるのであれば、店側としても立ち食い形式の飲食店に価値を見いだせるはずだ。
経営者としては「回転率が上がることで利益が生まれる」というメリットがあり、消費者としては「低価格でクオリティの高い商品を食べることができる」というメリットがあるようだ。もちろん、立ち食いなのでゆっくりすることができないというデメリットもあるだろうが、低価格でおいしいものを食べられるだけで消費者にとっては十分な魅力があるはずだ。それゆえ、立ち食い形式の飲食店が増えているのだろう。
これだけ成功例があれば、まだまだ立ち食い形式の飲食店が増えると考えられ、伸びしろのある業態だと言えよう。立ち食い店は、単に低価格なだけではなく、「低価格でおいしい」というイメージが広まりつつあり、近い将来、ファストフード業界を席巻することになるかもしれない。
(文=千葉雄樹/A4studio)