ここでDNP連合について説明しよう。DNP連合とは大日本印刷(DNP)の傘下にある、丸善、ジュンク堂書店、文教堂、図書館流通センター(TRC)のことを指す。TRCとは図書館へ出版物を卸す会社で業界のトップ企業。DNPの傘下で丸善・ジュンク堂書店・TRCは経営統合し、DNPを親会社とするCHIグループ(現在は丸善CHIホールディングスに社名変更)を設立。現在は同ホールディングスの下に、TRC、丸善書店(丸善の店舗部門)があり、さらに丸善書店の子会社としてジュンク堂書店がぶら下がる体制にある。
また、文教堂はDNPの子会社という立場で、丸善CHIホールディングスには参加していないが、共通ポイントサービスなどにおいては、協力体制にある。12年1月期の決算で、売上高は1760億円、文教堂の375億円も含めて2000億円近くの規模となる。書店業界では紀伊國屋書店の1100億円を抜いてナンバーワン企業だ。
これだけ巨大になったDNP連合が、トーハン新体制への反感だけで取引先を変えたのだろうか? それとも何か将来を見据えた思惑があるのか。話を聞いてみると、DNP連合とトーハンとの確執が浮き彫りになってきた。
DNP連合各社のトーハンへの反感を見て行こう。まずは文教堂に関して、ある出版社役員は言う。
「文教堂と言えば、トーハンの一本帳合店として知られる老舗書店。近年になって日販とも取引を始めたが、ほとんどの店舗がいまもトーハンと取引を続けている。さらに経営が苦しくなって、近年はトーハンや出版社数社、ゲオなどから出資を受けていた。それでも経営が好転しないため、トーハン(上瀧氏)からかなり締め付けを受けていたらしい。結局は、ジュンク堂書店に24.95%の株式を引き受けてもらい、DNPの傘下に入った。文教堂の嶋崎富士雄社長は工藤氏に相当感謝しているが、トーハンへの反感はいまだ根強いようだ」
また、ある取次関係者はTRCについて「09年の暮れに、TRCが10年2月から日販に帳合変更する旨を発表した。それを受けて、トーハンの山﨑厚男社長(当時)は業界紙を集めて、緊急記者会見を開き、『図書館界を混乱に招く』として猛反対。10年7月にはTRCを提訴するという事態にまで関係はこじれた。TRCの石井昭会長と上瀧氏は相当不仲だったようで、両者が決裂したのはTRCと日教販(出版物の卸業)との合併を、上瀧氏に阻止されたときだったと思う。同社は日販への帳合変更の理由のひとつに、この“日教販問題”を上げていた。トーハンは、近い将来こうした事態になることを一切考えていなかったのかと疑問に思うほどの慌てぶり。これも結局は“老害”が招いた結果だったのだろう」と話す。