――ここ最近、テレビ業界の視聴率競争において「日本テレビ好調、フジテレビ不調」ということがよくいわれますが、果たしてこの構図は定着するのでしょうか?
長谷川豊(以下、長谷川) そういった質問をよく受けます。しかし、私は4~5年後には、この構図はひっくり返るだろうとみています。現在のフジ低迷は、「ブレた」ことが原因だと思います。元局員という立場からみると、いつの頃からか古巣は変わってしまいました。とにかく変に真面目になってしまい、“フジらしさ”がまったくなくなってしまった。以前の古巣には、時代になど逆らいまくって、番組内容について批判が集まったら逆にそれをネタにする気概がありました。中学校のクラスで先生の言うことを聞かなくて怒られてばかりの問題児だけれど、なぜか人望がある――。そんな「愛すべきバカ」がフジでした。バカなのに、問題児なのに、なぜか目が離せない。怒られているのに、なぜか文化や情報はフジから発信されている――。多くの人々がフジに抱くイメージも、昔はそうだったはずです。
しかし、いつの頃からかフジは、学級委員長の真似をするようになってしまった。ちなみに典型的な学級委員長タイプのテレビ局が日テレであり、一貫してブレていない。一方の古巣はブレて真面目になってしまった。例えば、バラエティー番組でも、社会見学や「ためになる話」などをテーマにし始めましたが、誰もそんな番組をフジに求めていないのに。
影落とす社員の年齢構成
――では、なぜフジはつまらなく、オシャレじゃなく、憧れるべき点がなくなってしまったのでしょうか?
長谷川 その理由のひとつとして、フジ社員の年齢構成を挙げたいと思います。1500人ほどいる社員の平均年齢が、現在はなんと46歳を超えているのです。これは50代で日枝久氏(現会長)がトップになった時と比べると、あまりにも違う点です。それに伴い、社員たちは「年齢」ではなく「心」が老けてしまった。昔の人気番組の焼き直しばかりをやり、昔の栄光を思い出し自慢する“イタい”中年が皆さんの周りにもいませんか? 古巣はテレビ局として、そうなってしまった。
――では、フジはこのまま衰退していく運命なのでしょうか?
長谷川 私は必ず盛り返すと、すでに去年からいろんな場所で明言しています。私は古巣の中にいる素晴らしい若きクリエイターを何人も知っています。確かに今の局長クラス以上は、日枝会長のイエスマンで固められており、自身の保身と出世を最優先に考えるタイプが多い。しかし、視聴率が低迷すれば、そのような人たちがこのまま社内で幅を利かせることはできなくなるでしょう。必ずフジ内部で大きな改革の波が訪れ、現在現場にいる素晴らしいクリエイターたちが存分に力を発揮できる日がやってきます。
私はその日が来るのが4~5年後とみています。そして、東京五輪が開催される2020年あたりでフジは再び視聴率3冠を取り戻すとみています。なぜそう言えるのかは、予言が当たったらまた解説します(笑)。まぁ見ていてください。ほぼ、そうなりますから。
ただ、テレビを取り巻く環境は変化しつつあります。東京でいえば、ローカル局の台頭が挙げられるでしょう。例えば、TOKYO MX(9チャンネル)では、私が出演する番組も含め、口コミで「面白い」という噂が広がり、視聴率も営業利益も飛躍的な伸びを見せています。MXは現在、3期連続の過去最高益を更新中であり、恐ろしいほどの勢いです。全国を見渡しても、ここまでの勢いを持つテレビ局はありません。
すでにMXの看板番組である『5時に夢中!』は常に平均視聴率5~7%を確保し、大手キー局各社がニュース番組を放送する夕方の時間帯で、2位や3位に食い込んできています。これは大手テレビ局の天下り先であるビデオリサーチ社は「都合の悪い真実」であるため発表していないのですが、実はもうそこまでMXの勢いは来ているのです。「面白いテレビ番組」は、必ず視聴者に選ばれるのです。
つまり、日本テレビが現在圧勝をしているのは「今の日本テレビ」が「面白い」からであって、どのタレントを使っているとか、どの芸能事務所をひいきにしているとかではなく、単純に「視聴者が見ていてプラスの時間となる」番組を数多くつくっているからなのです。一方、フジが苦しんでいる理由は、どれだけ現場が奇抜で面白そうなアイデアを出しても、守りに入った“日枝イエスマン”の上層部に却下されたり、接待を受けている芸能事務所のタレント起用を上層部から強要されてしまい、自由な戦いができていないためです。こんな状況はいつまでも続きません。若きクリエイターたちの才能が必ず爆発する日が来ます。私は、その日がきっと近いうちに来ると予言します。
(構成=編集部)