保険の契約には、大規模な地震・噴火・津波や戦争などの場合に、「保険金を支払わなくてもよい」という免責条項がある。今回は噴火に該当するため本来は免責になるが、生保協会に加盟する保険会社は全社、免責を適用せずに保険金を全額支払う。
生保協会によると、各社は2011年の東日本大震災でも保険金支払いに免責事項を適用しなかったとしている。「保険会社が大規模災害を受け、契約上支払わなくてもよい保険金を支払った」と好意的に受け止められそうだが、大手生保社員は「とんでもない」と苦笑いを浮かべる。
「確かに、災害免責条項が保険にはあります。ただ、なぜか報道されていませんが、これまでも地震や噴火、津波の被害に各社は免責を適用せずに保険金を支払ってきました。東日本大震災以前は、声を大にして言ってこなかっただけです」(同)
盤石な財務基盤
では、なぜそのように形骸化している免責事項が、いまだに生保商品には設定されているのだろうか?
「本当に、万が一の危機を想定して免責を設けています。例えば、ミサイルが日本に撃ち込まれて1000万人規模で死者が出た場合には、会社がさすがに存続できなくなる。そうしたリスクに備えるためです。支払う必要が契約上ないものの、数千人や数万人規模への支払いを渋ることで、企業イメージが悪化するほうがむしろ怖いのが本音です」(同)
つまり、この言葉を裏返せば、1000万人規模の被害が発生する災害が起きない限り、生保会社の財務基盤は揺るがないのだ。実際、大手生保首脳は「首都直下型地震で100万人規模で被害者が出ても、保険金や給付金を支払える」と豪語する。そうした安定した財務基盤を築いているのが契約者が支払う保険料であることを考えると、契約者からすれば保険料に少しばかり割高感を抱きたくもなる。
長崎県の雲仙・普賢岳災害を上回り、戦後最悪となった御嶽山災害は、図らずも保険会社のしたたかなリスク算出と保険料の設定を浮き彫りにした。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)