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森秀明「『itte』の経営学」(10月23日)

P&Gと3M、ヒット商品を生み出し続ける秘密 「闇研」のルール化で開発を活性化

文=森秀明/itte design group Inc.社長兼CEO、経営コンサルタント
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 また、3Mでは次の3つのルールが定められています。

(1)勤務時間の15%を自由に使ってよいから、自分の担当業務以外のことをやりなさいという「15%ルール」。
(2)(同社は約30の小さな事業部から編成されていますが、)各事業部の開発部隊は、外部の企業大学、人材と連携して開発を行うこと。
(3)研究者や技術者、製品企画者は自ら担当した製品を実際に使用し、効果的に利用できるかどうかを体験した上で、革新の種を掘り起こすこと。

 両社の取り組みからわかるように、「知の探索」とは「オープンイノベーション」ともいえるでしょう。つまり、「外部と連結する」「知と知の組み合わせを試してチャレンジする」という取り組みです。

 ちなみに両社はともに、新しいことに取り組む組織と既存の業務を改善する組織を分けています。図に示した左下の活動を行なう組織と右上の活動を行なう組織は同居しづらいためです。

 大雑把にとらえれば、左下の業務を行なう人材は組織の主流を構成する人材で、既存の組織の中での優等生といえます。一方で、右上の「知の探索」を行うのに相応しい人材は、既存の組織からはやや外れた異能の人材です。ですから、左下の組織と右上の組織とでは、必要とされる人材の能力もそのマネジメントの方策も異なるのです。

●かつてヒット商品を生んだ「闇研」

 両社は米国企業ですが、実は日本企業もかつては「知の探索」を行なっていました。闇の中での研究、俗に言う「闇研」であり、これは非公式な研究開発業務です。社員が会社には業務として認められていない研究を就業時間外にこっそりと行ない、その成果を自分のデスクの中にしまっておくという行為です。この闇研の成果として有名な例としては、VHSビデオや液晶テレビ、第三のビールなどが挙げられます。

 ですから、日本企業も決して「知の探索」が不得手なのではありません。1991年のバブル崩壊以降の失われた20年の間に、効率的であることを賞賛し無駄な行動を排除してきた結果、「知の探索」という組織能力を失わせてきたのです。これは、多くの日本企業における経営の意思決定がもたらした必然的な帰結なのです。

 今後、新たなアイデアや新事業を生みだす組織能力を取り戻すためには、「闇研」のようなシステムを目に見えるかたちで組織化・制度化する必要があります。

森秀明/itte design group Inc.社長兼CEO、経営コンサルタント

森秀明/itte design group Inc.社長兼CEO、経営コンサルタント

一橋大学経済学部卒、慶應義塾大学大学院修了。ボストン コンサルティング グループ、ブーズ・アレン・ハミルトンなどの外資系コンサルティング会社を経て現職。企業や組織への経営コンサルティング活動とともに、経営者へのアドバイザリー業務を行っている。WE HELP COMPANIES CREATE THEIR FUTURE STORIES. がミッション。著書に『外資系コンサルの資料作成術』『外資系コンサルの3ステップ思考術』(ダイヤモンド社)がある。
株式会社 itte design group

Twitter:@ittedesigngroup

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