同社は黒字を達成できた原因について、他社にみられる閑散期と繁忙期の旅客数の差がなく、期中の平均搭乗率が83.7%と高かったことを挙げている。今期はパイロット不足による減便の影響で、売上高は30億円の減収、利益ベースでは10億円の減益の要因になる。それでも那覇空港の第2ハブ化が寄与することもあり、15年3月期は14年同期比10%の増収を見込んでおり、増益を目指す。
一方、成田をハブとするバニラ・エア(旧エアアジア・ジャパン)の14年3月期決算は、赤字幅が拡大した。売上高は前期比1.9倍の65億円と倍増したが、営業損益は56億円の赤字(前期は33億円の赤字)、最終損益は60億円の赤字(同36億円の赤字)となった。すでに資本金を食い潰した。
LCC3社の中でピーチが独り勝ちしたのは、関空をハブとしている点が大きい。関空がLCCのハブ空港に特化した効果で、関空を発着する国際線では、4~9月に搭乗した外国人の数が日本人を上回った。外国人は上半期では過去最高の321万人、これまで最高だった前年(245万人)から31%伸び、日本人は5%減の317万人だった。
ピーチは昨秋から韓国・釜山、台湾・高雄線を相次いで開設し、香港線も増便した。海外のLCCでは13年11月に香港エクスプレス航空が、14年3月には中国の春秋航空が就航し、春秋航空日本はその後、路線を増やしている。
●使い勝手悪い成田
そんな関空に比べると、成田は使い勝手が悪い。24時間対応の関空と異なり、成田は騒音対策のために夜11時から翌朝6時までの間、滑走路が使えない。LCCは安い運賃と収益性を両立させるためには飛行機(機体)の稼動率を高める必要があるが、この制約がLCC各社のネックになっている。
成田空港の運営会社はLCC専用の第3旅客ターミナルの運用開始に伴い、来年4月から国内線の利用者からも旅客サービス施設使用料(大人:380円)を徴収する。
「成田は国際線への乗り継ぎという面が強く、国内線だけを使う客は少なかった。そのため国際線のみ使用料を徴収してきたが、ジェットスター、バニラ、春秋航空日本のLCC3社が成田を国内線の拠点にし、国内線の利用客が増えたため方針を変えた。利用者は航空チケットの発券時に運賃に施設使用料を上乗せして払うため、国際線から国内線への乗り継ぎ客も対象になる。低価格を売り物にしているLCCにとって、380円の上乗せは決して小さくない金額」(業界関係者)
10月、急速な資金繰り悪化に苦しむスカイマークが成田から撤退した。「次はジェットスターとの見方も強く、カギは大株主の日航とカンタスの動き次第」(同)。航空自由化の波が動きだしてから約20年、LCCの失速が進めば、国内航空市場は全日空と日航の寡占状態に回帰することになる。
(文=編集部)