ベネッセHDが組織改革を進める一方、東京都の弁護士12人が12月3日、「ベネッセ被害者の会」と弁護団(団長・真鍋淳也弁護士)を立ち上げ、来年1月にも損害賠償を求めて東京地裁に集団訴訟することを明らかにし、参加する被害者を募っている。同社から情報流出の報告を受けている人が対象で、12月末にいったん募集を締め切って提訴する。弁護団は「ベネッセは流出を認めており、判例からも賠償が認められる可能性が高い」としている。提訴時の実費、着手金は不要だが、賠償金を得た場合は一部を弁護士の報酬などに充てる。問い合わせは松尾千代田法律事務所内の事務局(03-6272-3320)。
●ダイレクトメールからの脱却
ベネッセHDの会員情報流出事件は教育業界に大きな影を落とした。顧客情報をもとに電話やダイレクメール(DM)、電子メールなどでセールスをする「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる手法は、教育業界では広く行われてきた。
個人情報の入手で一歩先行していたのが、ベネッセHDだった。同社は主に、「たまごクラブ」「ひよこクラブ」などの幼児向け雑誌の購読者アンケート、スタンプラリーやクイズラリーなどの子ども向けイベントの2つの方法で個人情報を収集していた。小学校入学前の子どもは「こどもちゃれんじ」、小学校から高校生までは「進研ゼミ」への加入に誘うDMを打って効率的な会員獲得につなげてきた。今回の事件は民間企業の情報流出事故としては最大規模になるが、名簿業者の間で同社の情報が転売を繰り返されてきたのは、情報の精度が高いからだといわれている。今回の事件で、イベントや雑誌でのアンケートは中止に追い込まれた。
そこでベネッセHDは、「DMからの脱却を目指し、DMに頼らない営業方法の開発に取り組んでいる」として、ビジネスモデルの改革を明らかにした。創業家出身の福武総一郎最高顧問から原田氏がベネッセHDのトップに招かれたのは、ビジネスモデルの転換を託されたからだ。「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」の会員数は13年から2年連続で20万人超ずつ減った。今回の事件がなくても、DM中心の勧誘から転換せざるを得なくなっていた。
そこで新たな会員獲得策のカギを握るといわれているのが、教育業界はこれまで消極的だったITの活用である。今回の事故をめぐり、競合他社のジャストシステムがベネッセの個人情報を名簿業者から購入していたとして物議を醸したが、同社はタブレット端末利用の授業という斬新な手法で会員数を急速に伸ばしてきた。