さらに12月2日には、同月中に本社やグループ40社の全部門から300人の希望退職を募集すると発表。希望退職を募るのは1955年の創業以来初めてとなる。14年4~9月期の連結最終損益で20億円の赤字となっており、希望退職が第1弾で、通信教育事業や間接部門の人員を削減する。また、グループ各社から700人を介護子会社、ベネッセスタイルケア(東京・新宿)や全国500カ所に設ける学習相談スペース「エリアベネッセ」などに15年3月末までに移す。
今後、グループ各社の人事・経理など間接部門の機能を統合し、900人いる間接部門の人員を450人に半減、希望退職や配置転換によって人件費を数十億円圧縮する。
7月に発覚した会員情報流出事件で揺れたベネッセHDの原田泳幸・会長兼社長は、10月1日から中核事業会社、ベネッセコーポレーションの社長を兼務している。「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」などの通信講座の10月時点の国内会員数は、1年前より7.1%(約25万人)少ない325万人まで減少し、情報流出が発覚した7月から9月までの新規会員は前年同期に比べて6割減った。ベネッセHDは、原田氏が持ち株会社と事業子会社のトップを兼任することによって「改革を一体的に進め、より強力に成長戦略を実行する」としている。
●経産省の勧告
経済産業省はベネッセが報告した再発防止策は不十分だとして、個人情報保護法に基づき再発防止を徹底するよう勧告した。同社は情報セキュリティ企業のラックと共同出資会社をつくり、顧客情報のデータベースの保守や運用を行うことにし、原田氏は「世界で有数のセキュリティの保守管理体制をつくる」と胸を張った。ところが、経産省はベネッセHD、ベネッセコーポレーション、この新会社が個人情報を保護するためにどのように役割を分担するかが不明確だと指摘。セキュリティ対策導入の工程を具体的に示すよう求めた。
外部の専門家をトップとする「個人情報漏えい事故調査委員会」の調査報告の概要を見ると情報管理の落とし穴が浮び上ってくる。制御システムのバージョンアップの際に、特定の新機種のスマートフォン(スマホ)に対して、情報持ち出しの制御機能が働かず、容疑者は楽々と自分のスマホで個人情報を持ち出すことができた。漏洩した件数は3504万件に上った。今回の流出事件は、ベネッセHDの保守・運用子会社、シンフォーム東京支社に勤務していた業務委託先社員が不正に情報を持ち出したことが発端だが、ベネッセHDはシンフォームの業務を14年度中に終了させる方針だ。従業員488人(14年4月時点)は配置転換を進めるが、2割(100人)程度の削減を行う予定。保守・運用業務は、ベネッセHDとラックの共同出資会社に移管される。