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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏(12月16日)

スゴすぎるタワシの秘密?高性能で特許取得、外国人デザイナー起用…転身組が仕掛ける革命

文=高井尚之/経済ジャーナリスト
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●昔ながらの街で発信

 冒頭のアンテナショップの話に戻そう。谷中を店舗の場所に選んだ理由を、マーケティング部マネージャーの鈴木昭宏氏は次のように語る。

「当社の商品は、やはり昔ながらの街で発信したかったのです。古くからの寺があり職人も残る街として浅草も候補として挙がりましたが、より生活に密着した住宅街であるこの場所を見た時にピンときました」

 フランスの自転車部品メーカーの日本法人から同社に転じた鈴木氏は、周囲と連携しながら伝統と革新のバランスを考える。2012年に社長に就任した智浩氏が目指す「さらに100年続く企業」のために知恵を絞る立場の1人だ。その智浩社長は音楽業界からの転身組で、社長就任前の企画部長時代から新たなモノづくりやコトづくりを試行錯誤してきた。

 亀の子束子全体の商品販売総数は、長期トレンドでは徐々に減っている。商品の持つ高い機能性に、どんな情緒性を付け加えていくかの答えは、今年の商品展開にも表れている。
 
 同社が訴求するキャッチコピーに「私は母から。母は祖母から。」というものがある。1950年代後半を思わせる、台所に立つ後ろ姿の主婦の写真に添えられたものだ。

 祖母―母―娘と継承されてきたものを、21世紀の今後も持続させていきたい。その取り組みの象徴が、4坪の店から発信する「タワシと消費者との出会いの場」なのである。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト)

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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