幸楽苑290円ラーメン販売中止の高価格路線、それだけでは増収困難と予想される理由
したがって、今回の醤油らーめんで百花繚乱セグメントを戦うことは、難しいと考えているのだ。
●検討すべき2つの戦略
もちろん、実際の醤油らーめん投入の結果がどうなるかはわからないし、せっかくのチャレンジなのでぜひがんばっていただきたいと考えている。そして、ジャストアイデアではあるが、以下のような方向性も検討できる余地がある。
基本的に戦いにくい百花繚乱セグメントには参入しない。自社の強みを生かせる低価格セグメントをさらに拡大する。そのために、次の2つの戦略を検討する。
(1)ラーメンも提供するファミレス化を図る
(2)カップラーメンよりも少し美味しいラーメンを提供する
すでに「幸楽苑」ではお子様セットも提供しており、老若男女あらゆる層をターゲット顧客としている。だから、あらゆる顧客への販売機会を増やすため、ラーメンを主軸としたファミレス化を図るのである。この場合、ライバルは百花繚乱セグメントのラーメン店ではない。低価格ファミレスだ。
次に、290円ラーメンではなく200円ラーメンを出す。コンセプトは、「カップラーメンよりも少し美味しいラーメン」だ。かけそばならぬ、かけラーメンでもよい。セルフで麺を湯がいて、スープをかける形式でもよいかもしれない。カップラーメンの弱点はペラペラ乾燥チャーシューだ。スープや麺はずいぶん改良されてきたが、それでもみすぼらしいチャーシューのカップラーメンは多い。そこで、麺量、スープを減らしながらも、チャーシューは1枚、または半カット付けてラーメン店らしさを出す。既存のラーメン店をライバルにするのではなくカップラーメン業界をライバルにし、そこから需要を取り込む考え方である。
重要なのは、自社の強みを考えた時に、戦いにくいセグメントで戦わないことである。戦いやすいセグメントを探して、そこでどう工夫をするのかを考えたほうがよい。
(文=牧田幸裕/信州大学学術研究院<社会科学系>准教授)