社員が失敗したら“はしごを外す”ダメ企業 ヤマトやコンビニ、革新的行動で成功する企業
ある意味、組織の活力を削ぐことはそれほど難しくありません。個人の行動を規制すれば革新は生まれなくなるのですから。色々な理屈をつけて、行動を起こさせなくすればよいのです。また失敗した行動に対して、もっともらしい理屈をつけて、その失敗を叱責すればよいのです。
●革新的行動で規制を破る企業
逆に革新的な企業では、現時点の規則ではやってはいけないことでも、行動することが許される土壌があります。ルール上はダメでも、やってみたら新しい事業が生まれることがあります。そうした企業では図の右下が大きく、現状を変える活力が革新の源泉になっています。
アメリカでは自動車の自動運転が許可されている州がありますが、これも革新的な企業が実行した成果といえるでしょう。アップルの音楽配信事業「iTunes」も、音楽業界の著作権問題に切り込んだ意味で、この例に挙げられます。可能な限り左上を小さくして、右下を大きくすることが革新的な組織をつくる土壌になるといえます。
そのほかにも、ドローン(無人で飛行する飛行機やヘリコプター)は既存の規制に直面していますが、その利用可能制は広く、アマゾンや宅配業者がその利用実験を進めています。また何かと話題性があり物議をかもしているUber(ネットを使った高級車の配車サービス)も、既存のタクシー業界との戦いが繰り広げられています。
かつて日本の宅配便事業は、運輸業界の規制に阻まれていましたが、ヤマト運輸は地域ごとの運送免許を取得することから始めて、戸配ができるようになりました。革新的な行動が規制を打ち破ったのです。コンビニエンスストアの共同配送も、業界のしがらみを打ち破った例です。米国のグーグルやアマゾン、アップルなどから学ぶだけでなく、日本企業にも革新的な例はいくらでもあります。
社員の立場から見ると、変革の芽はすでに組織の中にあるものです。例えば2010年に会社更生法が適用され実質的に破綻した日本航空の場合、経営再建のために同社会長に就任した稲盛和夫氏(京セラ名誉会長)が「予算をもらえるのが当然だと考えている社員には1円も予算を与えない」と宣言したことで、組織がガラリと変わりました。稲盛氏は図の右下の活動を奨励して、左上の活動を撲滅したのです。