瀕死のドラゴンズ、ファンもあきれる…不可解な契約更改、デタラメな球団経営&人事
「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数あるジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。
プロ野球のセントラル・リーグ、パシフィック・リーグ全12球団の選手も年末年始の休みから明け、自主トレーニングの様子が連日報道され始めた。本格的な野球シーズンの幕開けが待ち遠しいところだが、中日ドラゴンズについて気になることがある。それは昨年12月21日付東京新聞の記事『中日 年俸総額5%減』だ。同紙はドラゴンズの親会社である中日新聞の東京本社が発行している日刊紙だ。
同記事では、「又吉は大幅増4000万円」などと、又吉克樹投手をはじめとした選手の契約状況について言及している。ちなみに又吉投手は、四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズから2013年にドラフト2位で入団し、初年度から結果を残している。昨シーズンは67試合に登板して9勝1敗2セーブ、投球回数81回1/3イニングに対して奪った三振数は104、防御率は2.21という成績を収め、今オフの契約更改交渉において年俸840万円から4000万円に増えた(推定、以下同)。
同投手の活躍はともかく、一昨年の大幅なチーム総年俸ダウンの翌年を「5%減」という見出しで伝えた東京新聞の紙面からも、この2年のドラゴンズを取り巻く状況が浮かび上がる。「この2年」とは、監督在任8年間でリーグ優勝4回、日本シリーズ優勝1回という栄冠をもたらした落合博満氏が「ゼネラルマネジャー(GM)就任後に関わった2度の契約更改」を意味する。
今回は、ドラゴンズ球団内部の活動をビジネスにおける「組織運営」や「人材開発」の視点から分析してみよう。
●軸足の欠けた組織運営
筆者は1980年代からドラゴンズの動向を観察しているが、しばしば感じるのは組織運営の軸足のなさだ。最近の優良企業では、あえて非連続性の幹部人事(後任者のタイプが前任者とは異なること)でより高い企業レベルに挑戦する例もあるが、同球団の場合はそれとは違う後ろ向きの手法だ。監督人事でいえば交代で就任する「名古屋人(現役時代ドラゴンズ一筋だったOB)」の起用である。そしてこれは星野仙一元監督を除いては、たいてい失敗してきた。