瀕死のドラゴンズ、ファンもあきれる…不可解な契約更改、デタラメな球団経営&人事
●有力な若手が入団を希望しなくなった
昔と比べると、プロ野球の人気球団の勢力図には大きな変化が出ている。主催試合の観客動員数で示すと、人気ナンバー1は読売ジャイアンツ(14年は主催試合数72試合で301万8284人)、それに次ぐのが阪神タイガース(同268万9593人)なのは変わらないが、九州の球団としてすっかり根づいた福岡ソフトバンクホークス(同246万8442人)が3位となり、上位2球団に迫ってきた。
ドラゴンズは4位で同200万912人だが、ナゴヤドームが開業した97年以降では2番目に低い数字。谷繁元信選手兼任監督の就任効果もほとんど出なかった。「カープ女子」との流行語が生まれるほど女性ファンが増えた広島東洋カープが同190万4781人と追い上げている。
また、ドラフト候補となる有望選手の「好きな球団」でも、かつてのような巨人一辺倒ではなく、地域に根差すソフトバンクのようなパ・リーグ球団を口にする選手が増えた。
一方で「中日が好き」という選手の声は、最近は減ってきたという。プロ野球担当記者は「多くの主力選手の大幅な年俸ダウンが起きてから、ドラフト候補の選手本人の気持ちだけでなく、指導者や両親も積極的に中日を勧めなくなったのは事実」と明かす。
それでも落合氏の手腕への期待は高い。首都圏や関西圏に比べて中京圏にはプロ野球チームが1つしかないため、ドラゴンズ選手は昔から周囲にちやほやされることが多いといわれ、どこかぬるま湯的だったチーム体質を変えて、常時優勝争いをするようなチームを作り上げた監督時代の実績は特筆される。
ただしGMは監督とは立場が違う。監督は結果責任を負うが、GMには結果責任に加えて説明責任も求められる。冒頭の東京新聞の記事は、こう結ばれていた。
「落合博満ゼネラルマネジャー(GM)の就任2年目で初めて保留者が出た。再交渉でも提示額が変わらず、球団側の姿勢に選手側から不満の声も出たが、西山和夫球団代表は『査定の仕方について十分に説明できたし、選手とじっくり話し合える時間ができてよかった』と成果を強調した」
球団代表の西山氏は、別のスポーツ紙から転職した東京中日スポーツで総局長(編集局長に相当)を務めた後、球団に転じて現職に就いた経歴を持つ。契約保留選手との2回目以降の交渉は、落合氏ではなく西山氏が担ったという。
人事関連の著書も多い人材コンサルタントは「組織は、核となる人材で動くことも多い。特にキーパーソンとなる人材に対しては、責任者が面談に臨み、徹底的に向き合う姿勢が大切だ」と指摘する。今回の場合、選手と向き合う責任者は球団代表ではなく、GMではなかろうか。
「プロ野球の球団は一般企業とは違う」という意見が出るかもしれないが、企業体としての組織運営や人材活用の視点では変わりがない。親会社の役員も兼任する、ある球団の幹部も「経営という視点では両方とも同じだ」と語る。
「球春」という言葉もあるように、プロ野球各球団も2月から春季キャンプを行うなど、本格始動を迎える。ファンの夢や希望を担った選手が能力を発揮して活躍できるか。チーム編成という組織構築の視点で最も責任が重いのは、編成の最高責任者であるGMだ。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)