交流サイト事業の収益が悪化し、ソーシャルゲームを事業の柱に据え、パソコンから携帯電話主体に切り替えた。携帯電話向けゲームでは無料をうたっていたが、オプションによる課金システムで稼いだ。グリーは急成長を遂げ、最盛期の12年6月期の売上高は1582億円、営業利益は827億円。携帯ゲームに移行する前の07年6月期の売上高は3.6億円、最終損益は1億円の赤字。わずか5年で売上高は440倍と爆発的に伸びた。
一方、グリーの急成長に合わせるように、社会的な批判も大きくなった。子供相手に高額な課金で稼ぐというビジネスモデルそのものが批判の対象になり、消費者庁は12年7月から規制を実施し、グリーは大打撃を受け、成長にストップがかかった。
田中氏は09年フォーブス(アジア版)に登場して以来、長者番付の常連となった。グリーの発行済み株式の46.65%を保有するが、業績悪化で株価はピーク時の4分1に下落した。今年の高値849円(3月30日)で計算すると、資産額は900億円以上。株価が現在のような状況だと、来年はフォーブスの長者番付から姿を消すかもしれない。
●番外編
サントリーホールディングス(HD)会長の佐治信忠氏の資産額は1200億円で、国内24位。かつては同2位になったこともある、世界的な大富豪だ。サントリーHDは非上場企業なので、株価に左右されることは少ない。それだけに、1200億円の資産額にとどまるとは考えにくいのだ。サントリーHDは、創業家一族の資産管理会社、寿不動産が89.32%を保有する筆頭株主だ。ところが、寿不動産は100%のファミリーカンパニーとはいえなくなった。
サントリー創業家一族の「ゴッドマザー」と呼ばれた鳥井春子氏が、10年10月に亡くなった。莫大な相続税問題が生じ、相続税軽減のウルトラCが公益財団法人への寄付だった。個人が相続財産を公益財団法人に寄付した場合、寄付した財産に相続税がかからない。
寿不動産の株主には、サントリー文化財団、サントリー音楽財団、サントリー生物有機科学研究所の3財団法人が名を連ねていた。この3つを、いずれも公益財団法人に衣替えし、春子氏が保有していた寿不動産の株式などの相続財産が寄付された。
その結果、サントリー音楽財団が移行した公益財団法人サントリー芸術財団が、寿不動産の全株式の13.81%を保有する筆頭株主となった。同じく公益財団法人となったサントリー文化財団が9.2%で第2位。生物有機科学研究所が公益財団法人に変身したサントリー生命科学財団は寿不動産の大株主名簿から消え、サントリーHD株式の0.52%を保有する第8位の株主として登場した。
サントリー創業一族は公益財団法人に相続財産を寄付することで、一族の財産が外部へ流出するのを防いだ。その代わり、公益財団法人はファミリーの持ち物ではなくなった。佐治信忠氏の資産額が少ないのは、公益財団法人の分がカウントされていないためとみられる。ちなみに同氏個人名義のサントリーHDの持ち株は、65万2000株(0.09%)である。
(文=編集部)