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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

中国、尖閣諸島で領海侵入&南シナ海で領土拡大…米国、中国企業の上場廃止法案を検討へ

文=渡邉哲也/経済評論家
中国、尖閣諸島で領海侵入&南シナ海で領土拡大…米国、中国企業の上場廃止法案を検討への画像1
G20首脳とテレビ会議を行う中国の習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、アメリカと中国の対立が再び深まっている。ドナルド・トランプ大統領は習近平国家主席と「今は話したくない」と語り、中国と断交する可能性も示唆した。

 アメリカでは、トランプ大統領以上に議会が強硬姿勢をとっており、上院では、中国企業のアメリカ市場への上場廃止、アメリカから中国企業への融資制限、中国共産党と幹部の資産凍結や没収を可能にする法案が提出されているほか、新型コロナ問題で中国に損害賠償を求める動きも強まっている。

 議会では、共和党の9割以上、民主党の3分の2以上が中国に対するさらなる強硬策を求めている状況で、それをビジネスマンであるトランプ大統領が抑えているという構図だ。また、共和党のマルコ・ルビオ上院議員をはじめとするアメリカの議員たちの主張は以下のようなものであり、これは資本主義のルールに照らしても正論といえる。

「中国の企業は会計情報を国外に持ち出すことができず、会計監査の具体的な内容も公開されない。もともと、このような企業が資本主義市場に上場していることが間違いであり、資本主義の債券市場で資金調達できることが間違いなのだ。また、国有企業が株式市場に上場し、民間企業といえども、取締役会の上に中国共産党支部がある形のため、実質的な国有企業であり、企業統治の概念からも上場が許されるべきではない」

 そもそも、このような企業がアメリカなどの自由主義市場で上場や資金調達できていたことが間違いであり、株式指数などに取り入れられていることもおかしいといえる。

 もしアメリカが中国企業の上場を廃止した場合、中国企業はほかの市場に活路を求めると思われるが、それを引き受けることができる市場はロンドンなどの一部に限定される。そのため、市場の資金規模の問題などからも、これまでのような資金調達は困難になるだろう。香港市場に関しても、外国人投資家の離脱が相次いでおり、香港での資金調達もアメリカでの上場が前提となっているため、難しい状況になると考えられる。

 また、米商務省は、すでに禁輸措置対象に指定している中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)への規制を強化した。今後は、ファーウェイや関連会社が設計に関与する半導体は外国製であっても、アメリカの製造装置を使用している場合は規制の対象となる。これにより、中国は半導体市場において大打撃を受けることが必至であり、5G対応の最新スマートフォンなどの開発に大きな支障が出るものと思われる。

尖閣諸島で領海侵入、南シナ海で領土拡大

 これらの危機を招いている元凶は、中国自身にほかならない。世界が新型コロナの対応に追われる中、中国は再び自国の覇権拡大に向けた動きを活発化しているのだ。

 特に顕著なのが、かねてから領有権を主張している東シナ海および南シナ海の動向だ。尖閣諸島周辺では、5月8日に4隻の中国公船が領海に侵入し、そのうち2隻が日本の漁船を追いかけるという事態が起きた。南シナ海でも、4月に「西沙区」と「南沙区」という新たな行政区を設置すると発表し、いずれも軍事拠点化を進めているという。

 一方、アメリカも4月末に南シナ海で「航行の自由」作戦を2日連続で実施したほか、5月には駆逐艦に台湾海峡を通過させるなど、中国を牽制する動きを強めている。5月18日からは世界保健機関の年次総会が始まっているが、ここでも米中は台湾のオブザーバー参加をめぐって対立するなど、火種は尽きない。

 中国は新型コロナの影響で延期されていた全国人民代表大会の開幕を5月22日に控えており、習指導部の求心力維持のために対外強硬姿勢をアピールする狙いがあるのだろう。一方、アメリカもトランプ大統領が11月の大統領選挙に向けて、中国に徹底抗戦の構えをとるものと思われる。

 新型コロナ禍の世界でも、米中対立の深化は避けられそうにない。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

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渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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