2024年の金融政策は、日銀がいつ2%の物価目標の実現が十分に見通せたと判断し、大規模緩和策の正常化に踏み切るかが焦点となる。マイナス金利政策を解除すれば、07年以来17年ぶりの利上げとなる。デフレの完全克服には、賃金と物価がともに上昇する好循環の実現が不可欠で、24年3月に見えてくる春闘の賃上げ動向がカギとなる。金融政策は年明け以降、重要な局面に入る。
「2%の物価目標が持続的・安定的に実現していく確度は少しずつ高まっている。確度が十分高まれば政策変更を検討する」。植田和男日銀総裁は25日の講演で、金融政策の正常化に意欲を示した。その上で、24年春闘で「はっきりとした賃上げが続くかが重要なポイントだ」と強調した。
日銀は今年、7月と10月に長短金利操作の運用を柔軟に行う方針を決定。長期金利が1%を超えて上昇することを容認した。来年はマイナス金利解除や長短金利操作の撤廃が検討課題となる。
日銀は来年1月11日に東京・日本橋の本店で冬の支店長会議を開き、全国各地の支店長から地域経済の現状について報告を受ける。中小企業への賃上げの広がりが確認できれば、政策変更に向けた議論が加速しそうだ。
市場では、早ければ1月の金融政策決定会合で政策変更に踏み切るとの観測もくすぶる。ただ、日銀内には「少なくとも来春の賃金交渉の動向を見てから判断しても遅くはない」(政策委員)と慎重な意見も少なくない。
1月に政策変更を見送れば、2月に会合の予定はなく、次のタイミングは3月以降となる。4月の会合は「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめ、新たに26年度の物価見通しを公表する節目となる。
市場では「日銀は4月会合で物価目標が達成されたと判断し、政策正常化の開始を決める」(SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミスト)との予想が多い。一方、来年は米国の利下げが見込まれる。日銀のマイナス金利解除は、日米金利差の縮小を意識した急激な円高を招きかねず、「米利下げが一巡する来年秋まで日銀は政策変更できない」(野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト)との見方もある。日銀が利上げして金融政策を正常化すれば住宅ローン金利なども上昇し、家計への影響も大きい。植田氏は重要な判断を問われる正念場を迎える。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/12/30-14:20)