2024年1~3月期の実質GDP(国内総生産)は2四半期ぶりのマイナス成長となった。能登半島地震に加え、ダイハツ工業や豊田自動織機の認証不正問題による自動車の生産・出荷停止という一時的な押し下げ要因が響いた。ただ、円安圧力が続く中、一段の物価上昇が消費を冷やす懸念は強い。4~6月期以降の持続的な経済成長には日本の潜在力の引き上げが必要だ。
◇認証不正、広く影響
「納期の遅れでお客さまに苦情を言われた販売店は多くある」。大阪府の自動車販売・整備工場の経営者は、認証不正による生産・出荷停止の影響について怒りを押し殺すように話した。日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会が発表した1~3月の国内の新車販売台数は前年同期比で約2割減。悪影響はトラックなどが購入できなかったことによる設備投資の減少にも広がり、マイナス成長の主因となった。
もっとも、4~6月期には自動車の生産再開や今春闘での高水準の賃上げが所得に反映され、プラス成長に転じるとの予想が多い。ダイハツの全ての完成車国内工場が稼働を再開した7日、本社(大阪府池田市)に出社した男性従業員は「いちから頑張っていければ」と期待を込めた。
◇円安でブレーキも
だが、24年3月期決算会見では企業幹部から歴史的な円安を懸念する発言が相次いだ。日本航空の斎藤祐二副社長は「燃油サーチャージに影響が出るかもしれない」と指摘。明治ホールディングスの川村和夫社長も「この(原材料や為替の)相場が継続すれば価格改定の可能性が出てくる」と再値上げを示唆した。
1~3月期は、GDPの半分以上を占める個人消費が0.7%減と、4期連続のマイナスとなった。これはリーマン・ショック時の09年1~3月期以来となる長さだ。コロナからの挽回消費は力強さに欠け、エネルギー価格の上昇や飲食料品などの相次ぐ値上げを受けた節約志向の強まりで、認証不正による自動車販売の落ち込みを除いても個人消費は長らく低空飛行を続けている。
◇為替が映す国力低下
政府・日銀は大型連休中に計8兆円規模の円買い・ドル売り介入に踏み切ったとみられるが、その後も円安圧力は継続している。
「円安が続く限り、3%台のインフレが続くのではないか」(ニトリホールディングス・似鳥昭雄会長)、「賃上げが円安で相殺されている」(ブリヂストン・石橋秀一最高経営責任者)との指摘も出ており、政府が「頼みの綱」とする今春闘での高水準の賃上げや定額減税の効果も、為替動向次第では減殺され、実質賃金のプラス転換がさらに遠のく可能性がある。
丸紅の柿木真澄社長は「為替は国力を体現している」と述べ、生産年齢人口の減少が続いて日本の国力が漸減すれば円安が一段と進行しかねないと懸念する。みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストは「企業の再編や高齢労働者の活用など、日本の労働者が潜在力を最大限に生かせる社会を構築していくことが求められる」と指摘。人口減少下でも成長を維持するため、生産性向上などを通じた潜在成長力の底上げの取り組みは避けては通れないとの認識を示した。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/05/16-18:24)