財務省は30日、国の2025年度予算編成に向けた各省庁からの概算要求を事実上締め切った。一般会計の要求総額は117兆円前後に達する見通し。24年度(114兆3852億円)を上回り、2年連続で過去最大を更新する。「金利のある世界」復活に伴う長期金利の上昇で国債(借金)利払い費が膨らんだほか、厳しさを増す東アジアの安全保障環境を反映して防衛費が大幅に増えた。
概算要求では、デフレ完全脱却と成長型経済を実現するための「重要政策推進枠」(特別枠)や、要求段階で金額を示さない「事項要求」も容認。物価高対策や賃上げ促進、少子化対策、防衛力強化などの重点分野で要求が相次いだ。
鈴木俊一財務相は30日の記者会見で「財政規律が緩むとか、一方的に増えることがないように、予算編成過程でしっかり対応したい」と述べ、年末までに固める25年度予算案に向けて厳格に査定を進める考えを示した。
省庁別で要求額が最も大きい厚生労働省は過去最大の34兆2763億円を計上。高齢化の進展で年金や医療などの社会保障費が増えたためで、全体の約3割に達した。「異次元の少子化対策」の司令塔として昨年発足したこども家庭庁の要求額は4兆2189億円となる。
財務省は、国債の元利返済に充てる「国債費」として28兆9116億円を要求した。日銀の追加利上げを受けて利払い費の積算に使う想定金利を2.1%に引き上げたため、当初予算で過去最大だった24年度(約27兆円)を上回った。
防衛省も27年度まで5年間の防衛費を43兆円程度と定めた政府の計画に基づき、過去最大の8兆5389億円を要求。24年度当初予算比1割増と大幅に増え、全体を押し上げた。
事項要求には、国土交通省が能登半島地震発生を教訓として積み増した災害対策費や、環境省が脱炭素化を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)促進策も含まれた。経済産業省は人工知能(AI)や半導体など経済安全保障面での投資支援を、外務省はロシアの侵攻を受けるウクライナ支援を要望した。
◇省庁の主な事項要求
▽国土交通省 能登半島地震を教訓とした災害対策費
▽内閣府 宇宙・海洋の科学技術振興
▽環境省 脱炭素化促進策
▽経済産業省 人工知能(AI)や半導体などの投資支援
▽外務省 ウクライナ支援や中東情勢対応費
▽財務省 原油・物価高騰・賃上げ促進対応予備費
▽厚生労働省 マイナンバーカードと保険証の一体化関連費
▽こども家庭庁 児童手当拡充、高等教育費の負担軽減
▽デジタル庁 サイバー安全保障分野の体制整備
(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/08/30-17:33)