「実家の片付け」は親が元気でも今すぐに着手すべき…生前整理は有効な“投資”

●この記事のポイント
・実家の片付けは「親が亡くなってから」では遅い。転倒防止や資産把握の観点から、親が元気なうちに行う生前整理は、将来の医療・介護・相続リスクを減らす有効な“投資”である。
・高齢者の転倒事故は自宅で多発する。実家整理は安全確保だけでなく、通帳や保険、不動産書類など資産の棚卸しを通じ、相続トラブルを防ぐ家族のリスク管理にもつながる。
・生前整理の成功には子ども主導と業者活用が鍵。大手リユースの買取や相見積もりを使えば費用を抑えつつ、親の安心と家族の将来設計を同時に整えることができる。
ビジネスにおいて、リスクの先送りは致命的なコスト増大を招く。これは「実家の整理」という一見プライベートな問題においても、例外ではない。
多くの現役世代は、「実家の片付けは親が亡くなってから、遺品整理として行えばいい」と考えがちだ。しかし、それは精神的にも、金銭的にも、最も負担が大きい選択である。
相続が発生した後の遺品整理は、深い喪失感のなか、相続税申告(原則10カ月)や不動産の明け渡し期限に追われ、判断力が鈍った状態で「捨てる・残す」を迫られるという、極めて過酷な作業になる。
一方、いま注目されているのが「生前整理」だ。親が元気なうちに、子ども世代が“プロジェクトマネージャー”として関与し、整理を進めるという考え方である。
これは単なる片付けではない。将来の医療・介護・相続リスクを可視化し、家族の意思決定コストを下げるための“先行投資”なのである。
●目次
- なぜ今すぐ片付けるべきなのか
- 「資産の棚卸し」という、もう一つの重要な目的
- 成功の鍵は「子ども主導・親参加」
- 大手リユースを使い倒すという選択肢
- コスト削減の鉄則は「早期着手」と「相見積もり」
- 実家の整理は「家族の未来」を作るプロジェクト
なぜ今すぐ片付けるべきなのか
なぜ「今すぐ」なのか。その最大の理由は、親の健康寿命を守るためだ。厚生労働省の統計によれば、高齢者が要介護状態になる主因の一つが「転倒・骨折」であり、その多くは道路や屋外ではなく、住み慣れた自宅で起きている。
床に積まれた雑誌、使われない家具、通路を塞ぐ段ボール。これらはすべて、日常に潜む「見えないリスク」だ。
実家の整理は、単なる掃除ではない。転倒を防ぎ、要介護状態への転落を防ぐ“住環境のバリアフリー化”なのである。
「多くの方が見落としがちですが、転倒による要介護化は、医療費・介護費・収入減少が同時に起きる“複合リスク”です。片付けによってそれを防げるなら、数万円〜数十万円の整理費用は家計防衛として非常に効率の良い支出と言えます」(相続コンサルタントでファイナンシャルプランナーの田中真一氏)
「資産の棚卸し」という、もう一つの重要な目的
実家の整理には、もう一つ重要な意味がある。それが資産の可視化だ。
生前整理の現場では、使われていない預金通帳、昔加入したまま放置されている保険、貴金属や骨董品、不動産の権利書や測量図が次々と見つかるケースは珍しくない。
これらを親の判断能力が十分なうちに把握し、管理場所や意向を共有しておくことは、相続トラブルを未然に防ぐうえで極めて重要だ。
「相続トラブルの多くは、財産額そのものより“何が、どこに、どれだけあるのか分からない”ことから起きます。生前整理は、家族間の情報格差をなくす“資産管理プロジェクト”です」(同)
成功の鍵は「子ども主導・親参加」
実家の整理で失敗しやすいのが、「親に任せきり」か「子どもが強引に進める」ケースだ。正解は、子どもが主導(PM)し、親を意思決定者として尊重するという役割分担である。
親の役割→「残す・手放す」の判断
子どもの役割→重い作業、廃棄ルール確認、業者選定・手配
「片付けてほしい」ではなく、「安全のために、一緒に整理しない?」と提案する。
このプロセス自体が、親の体力・判断力の確認、将来の介護や住み替えの話題共有につながる、貴重なコミュニケーションの場にもなる。
大手リユースを使い倒すという選択肢
すべてを自分たちでやろうとするのは、タイムパフォーマンスが悪い。特に大量の不用品や大型家具・家電がある場合、大手リユースショップの活用は非常に合理的だ。
「トレジャー・ファクトリー」などの大手は、買取、廃棄、生前整理、不動産相談までをワンストップで提供している。メリットは明確だ。
・価値あるものは即買取
・残りは適切に処分
・買取金額を整理費用に充当可能
結果として、持ち出しコストを大きく抑えられる。
コスト削減の鉄則は「早期着手」と「相見積もり」
業者費用は数十万円規模になることもある。だが、工夫次第で大きく圧縮できる。
ポイント①:事前に“体積”を減らす
自治体の粗大ごみ回収などを活用し、業者に渡す前に物量を減らす。
ポイント②:相見積もりは必須
最低でも3社。
・買取重視か
・廃棄費用の内訳
・追加料金条件
を比較する。
これはビジネスの調達と同じだ。
実家の整理は「家族の未来」を作るプロジェクト
実家の片付けは、親の老いを直視する行為や面倒な家事ではない。
それは、
・親が安全に暮らすための環境投資
・家族が資産を正しく引き継ぐためのリスク管理
・残された時間を穏やかに過ごすためのQOL向上施策
である。
親が元気な今こそ、実家という「ブラックボックス」を開けるタイミングだ。今動くことで節約できるのは、将来の費用だけではない。家族の混乱と後悔そのものを回避すること――それこそが、生前整理の最大のリターンなのである。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)











