2020年といえば、東京五輪が開催される年だが、財政からみれば、ある目標の年に当たっている。政府は「15年に基礎的財政収支を10年から半減させ、20年に黒字化」という目標を掲げているのだ。
基礎的財政収支はプライマリーバランスとも呼ばれており、利払いなど公債費用を除外した財政収支のことを指す。膨張する債務残高を抑制するための目安で、10年における国・地方の基礎的財政収支の対GDP比はマイナス6.6%だったが、政府は15年にはこれを半減し、20年に黒字化するという目標を立て、国際公約としている。
1月20日には内閣府は経済財政諮問会議に「中長期の経済財政に関する試算」を提出した。この試算が政府の財政の見通しを示す際の前提になることから、各メディアはその内容を一斉に報じた。
LINEが運営するニュースサイト「BLOGOS」の1月27日付記事『内閣府が中長期財政試算を発表。前回試算よりも状況が改善している理由』にあるように、試算における15年の基礎的財政収支は経済再生ケース(アベノミクスが成功した場合、平均成長率は実質2%程度、名目成長率3%程度)と、参考ケース(平均成長率は実質1%程度、名目2%程度)の2つのケースを明らかにしているが、経済再生ケースでは、対GDP比ではマイナス3.2%となり、10年との比較で半減(マイナス3.3%)という目標はクリアする。
●増税しても目標達成は困難
一方、黒字化が目標の20年の基礎的財政収支は対GDP比ではマイナス1.9%。これは消費税を10%に増税することを前提にした数字なので、このままの状態では、たとえ増税を行ったとしても、財政目標の達成は難しいという。
内閣府は昨夏にも経済財政諮問会議に「中長期の経済財政に関する試算」を提出しているが、その後の経済対策効果もあって、税収の予想が上振れ、財政収支が前回試算より改善する予想となっている。
ただし、内閣府の中長期財政試算の経済再生ケースはあまりにも楽観的すぎるという声が研究者には多い。
1月28日付日本経済新聞連載コラム『大機小機』の『成長率、「目標」と「前提」は大違い』では、前提としている経済の姿がかなり楽観的で「議論の突っ込みどころ満載」だと問題視している。
「試算では14年度と15年度の成長率(実質、以下同じ)をそれぞれ1.4%、1.7%と見込んでいる。これに対して、民間エコノミスト約40人の平均的な見方(日本経済研究センターの調査)は、0.8%と1.4%である。
長期的に見ても、試算では13~22年度の平均成長率を実質2%程度としている。これは、政府の成長戦略が目標とする成長率である。(略)ちなみに経済研究センターの中期経済予測(昨年12月)では、労働力人口の減少などを織り込んだうえで、21~25年度の成長率は0.7%。政府試算が前提とする成長率は、これに比べてかなり高いといえる」
この記事では、政府が「目標」を試算の「前提」にするのはどうかと指摘している。確かに、高めの成長率を前提にすると、歳入が増えて財政赤字は小さめとなる。しかし、ひいき目に見ても「20年度の基礎的財政収支の黒字」という目標を実現できないという問題がある。