最初で最後のももクロ出演、大森靖子らの夢のソロステージ…TIFはいかにして始まったか
“限界”に挑戦した2012年
TIF史上、2012年は歴史に残る年である。
出演組数が前年の57組から111組と増加。メインステージはZepp Diver Cityへと拡大したものの、細かいステージも増加し、急激に増えた出演アイドルたちを詰め込んだタイムテーブルはあっという間に崩れ、開演が20分30分押しは当たり前の状態に。そこに、ステージの崩壊によるライブ中止のハプニングや、急激な雨によるステージ振替などが重なり、良くも悪くも運営の“緩さ”にファンが振り回されることとなる。
中止になってしまったステージの代わりに、急遽lyrical schoolが夜にオープンスペースSMILE GARDENの周りを歩きながらサイファー(即興アカペラフリースタイルラップ)をやってのけたのもハイライトだ。アイドリング!!!河村唯・酒井瞳がMCを務め、卒業後の今もなお健在のトークコーナー「スナックうめ子」が始まったのもこの年。さらなる深夜帯の運営が強行されスケジュールが押した結果、朝4時までのライブステージ(生放送はオールナイト)や朝6時からの早朝ショーと、とにかくやれる限りのすべてを詰め込んだような年となった。
2014年、今ではあり得ないソロアイドルのステージ
2010年代のアイドルシーンとは、すなわちグループアイドルのシーンであった。ソロのアイドルにとっては厳しい時代だといわれ続けているが、そんななか、ベテランから新規までソロアイドルをピックアップしてソロステージとしてまとめたのは、2014年開催の第5回TIFの大きな特徴といえよう。
小桃音まい、寺嶋由芙、吉川友、小池美由、大森靖子、吉田凜音、クルミクロニクル。小桃音まいはその後グループ活動に移行し2019年夏には卒業、小池美由はテレビタレントとして成功、吉田凜音はアイドルとしての活動は終了、クルミクロニクルは2015年に活動終了――と、今となってはあり得ない夢のようなキャスティング。当時のアイドルシーンの重要ないち側面に見事フォーカスしてみせた、貴重なステージであった。
先に挙げた2012年のトラブルを筆頭に、フジテレビ主催ということでアイドル業界の中心にありながらも、どこかでTIFが一定の“緩さ”を併せ持っていたのは、総合プロデューサーである門澤清太氏の存在によるところが大きい。その門澤氏がまさにその職にあった2013年頃までが、現在にいたるまでのTIFの礎が築かれた時期だったといえるのではないか。継続開催されるかもわからない状態でスタートしたこのイベントが、今では“世界最大のアイドルフェス”にまで成長した原動力は、間違いなくこの時期に形成されたものだ。
そして、そのホスト役を務めていたアイドリング!!!における“まさかの展開”が、TIFの大きな転機となっていく。
【後編へ続く】
(文=ガリバー)
ガリバー
アイドルのライブに通い始めて14年目。メジャーアイドルからインディーズ、地方アイドルのライブや握手会まで、年間約300回ほど足を運んでいます。大阪の地を拠点に、北は北海道から南は沖縄まで全国を回りますが、最近の遠征先は東京が多め。現在もっともハマっている「推し」は、乃木坂46の齋藤飛鳥さんと岩本蓮加さん、ラストアイドル・Love Cocchiの西村歩乃果さんです。<Twitter:@gulliverdj>