欅坂46はなぜ改名せねばならなかったか「大人へのレジスタンス」というイメージを超えて
欅坂46が7月16日に開催したオンライン無観客配信ライブ「KEYAKIZAKA46 Live Online, but with YOU!」にて、欅坂46としての活動に幕を閉じた後、改名して新たな道を進むことを発表した。
8thシングル「黒い羊」以降、約1年5カ月もの間リリースがなく、2020年1月にはデビューシングルから一貫してセンターを務め続けてきた平手友梨奈が脱退するなど、当初21人いた1期生が13人にまで減り、2期生メンバーのほうが多い状態になっていた欅坂46。いったんその歴史に幕を下ろし、再スタートを切る形となる。
まずは、この無観客生配信ライブ「KEYAKIZAKA46 Live Online, but with YOU!」が、非常に意欲的な取り組みであったことを述べておきたい。
ひとつのステージから行うのではなく、幕張メッセ内の各所に設置された複数のステージをメンバーが行き来する。トラックや乗用車が乗り入れてくる。ファンとリアルタイムでコミュニケーションを取りながらMCを進行する。そしてこれらを、会場外の扉も含めた縦横無尽に移動する動的なカメラワークによって見せる。まさに、見る者を魅了する素晴らしい作品であった。この新型コロナウイルス禍の状況においても、やはり欅坂のメンバーとクリエイティブチームは、このアイドルシーンにおいて、とりわけ異彩を放っていることを提示してみせたのである。
誰よりも間近で眺めていた、日向坂46の成功
だからこそ、なぜ改名なのか。
平手友梨奈を中心としたこれまでの欅坂46のイメージをアップデートできない、という判断があったことは間違いないだろう。「サイレントマジョリティー」での2016年4月のセンセーショナルなデビュー以降、8作連続で平手友梨奈がセンターを務め続けてきた結果、できあがってしまった欅坂46=平手の図式。それを、彼女の脱退後に更新することは容易ではなかった。
欅坂46のファンであれば、平手以外にも魅力的なメンバーが多数おり、ダークな雰囲気の楽曲以外にもポップで明るい曲が多くあることを知っている。それらのすべてを踏まえ、ファンは欅坂46を応援していたのだ。しかしそれだけでは、独り歩きした一般へのイメージを更新することはできなかった。その代わりに、アップデートするのではなくいったん区切りをつけることによって、欅坂46が創り上げてきた約5年間を「冷凍保存」状態に置くことを選んだのだろう。
欅坂46と日向坂46は、同じSeed&Flower合同会社所属のグループだ。欅坂46のリリースが滞っている一方で、欅坂46の下部組織ユニット「けやき坂46」としてスタート、その後日向坂46へと改名し、1stシングルは欅坂46が保持していたデビューシングルの売り上げ記録を更新、デビュー1年目にして紅白歌合戦へ初出場を果たした日向坂46。その実績を誰よりも間近に見ていたのは、欅坂46である。しかし日向坂46と違って欅坂46は、約5年の歴史にいったん幕を閉じてからの再出発となる。改名からその後の成功へと一直線に進んでいった日向坂46とは、その点が明確に違う。
タレントの改名など、いまや珍しいものではない。アイドルグループでもイメージ刷新のため、メンバーはそのままで改名を敢行することもある。ももいろクローバーZは改名後に大きく飛躍。モーニング娘。がその偉大な歴史を背負いながらも前進するため、毎年「改名」を行いその年の数字をグループ名に冠しているのはその代表例だろう。
グループへの愛を今なお強く持ち続ける卒業メンバーたち
卒業メンバーの行状などによりネガティブなイメージが先行する欅坂46かもしれないが、それがすべてではない。
グループを去ったメンバーには、「欅坂46に戻りたい」と発言する志田愛佳のような者もいる。今回のオンライン無観客配信ライブを視聴した織田奈那はTwitterで、「今日のライブを見て、みんな本当に可愛くて、かっこよくて、綺麗で、早くみんなが輝いているところを沢山見たいと思ったし、みんながもっと伸び伸び楽しく活動できる日が来て欲しいと強く思いました」と、熱い想いを吐露した。紆余曲折あったものの、グループへの愛を今なお強く持ち続けるメンバーもいるのだ。
10月のラストライブにおいて、欅坂46はその歴史にいったん幕を閉じる。しかし、メンバーが変わるわけではない。新たな名前で、新たな一歩を踏み出していくのだ。積み上がった偉大な楽曲たちがどうなっていくのか、実際のところ名前はどうなるのか、現時点ではまだ明確な発表はなくわからないことも多い。
しかし、「KEYAKIZAKA46 Live Online, but with YOU!」のラストでも披露された事実上のラストシングル「誰がその鐘を鳴らすのか?」には、「大人たちに対するレジスタンス」というこれまでの欅坂46の姿とは明確に異なる言葉がつづられている。過去の楽曲群から採られた言葉たち――「権力」「支配」といった言葉たち――を拾いながらも、次のステップに向かう姿勢が、メンバーみずからの手でたぐり寄せるようにつづられているのだ。
愛の救世主
誰がその鐘を鳴らすのか?
そんな重たい責任を持てるかい?
逃げたいだろう?
その綱の大きな権力を
逆に誰も握ろうとするかも…
鐘を鳴らせる主導権なんか
意味はないんだよ
支配したって幸せにはなれない
愚かなことだ
涙に覆われた、7月16日のこのパフォーマンスを忘れることはないだろう。欅坂46の約5年間の活動に対して、全身全霊の愛と敬意と尊敬を込めて、感謝を。
そして、2020年10月まで続く欅坂46としての活動に感謝しつつ、その先の未来にどんな新たなグループが生まれるのか、楽しみにしたい。
(文=ガリバー)