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「なぜあなたは美しくないのですか?」
さらに切ないのがその後。夢のようなひとときを過ごし、自宅に帰ったまる子たちには現実が待っている。とりわけその落差を気に病んだのが、学級委員の丸尾クン。夕飯の支度ができたと呼びかけに来た実母に「かあさま、なぜあなたは美しくないのですか?」と問いかけ、さらに「もっと綺麗で若いママが欲しいでしょう~~」といって泣くのである。
丸尾クンのお母さんは49歳。そして美しくない。つまり、40歳のときにようやく子を生んだ彼女は婚期を逃した「売れ残り」だったと考えるのが妥当である。「年老いたかあさまを許してェェ」といって息子と泣きじゃくる姿は、なんともやるせない。
併せて描かれている、一緒に花輪邸に行った同級生・はまじとブー太郎のお母さんも綺麗ではないし、住んでいる家もボロい。女性の若さ・美しさが貧富の差を生む。そんな摂理が明確に示されていて、今見てもなんだかグッとくる。もっとも、作者のさくらももこは『ちびまる子ちゃん』の大ヒットにより、莫大な資産を築き上げ、2度も結婚をしている成功者。「花輪邸」の話が事実かどうかは定かではないが、自身が過去に経験した不条理に奮起し、美以外の価値を世に問おうとした努力家なのかもしれない。
(文=小島浩平/ロックスター)
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