総合視聴率へ
たとえば去年10月からの半年間を振り返ると、従来のリアルタイム視聴率では、スポーツやニュースなどのライブ番組が上位を占める。『NHK紅白歌合戦』(NHK)、『箱根駅伝』(日本テレビ系)、野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)中継、サッカー日本代表戦、大相撲などがベスト20の大半を占めた。
ところがタイムシフト視聴率では、番組ラインナップが一変する。以下のとおりドラマがベスト20の9割を占めた。
・1位:『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)
・2位:『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)
・3位:『東京タラレバ娘』(同)
・4位:『ドクターX』(テレビ朝日系)
VR社はリアルタイム視聴率とタイムシフト視聴率から、総合視聴率を割り出している。家庭によってはライブで見た後、別の家族が録画再生で見る場合もある。こうした重複を除いたものが総合視聴率だ。
これによると、1~2位は『紅白歌合戦』だが、3位に『逃げ恥』、4位に『ドクターX』が入った。リアルタイム視聴率で強かったライブ番組だけでなく、タイムシフト視聴率で上位を占めたドラマが健闘し、さらにバラエティ番組も善戦している。ベスト50では勢力関係が拮抗するようになっていたのである。
広告取引への影響
テレビ局側は日本アドバタイザーズ協会に、新たな視聴率を広告取引の前提にしたいと申し入れた。論点の1つが、タイムシフト視聴率も広告取引の指標に加えることだ。
ところが録画再生視聴には課題がある。CMの大半がスキップされる点だ。たとえば、総合視聴率3位の『逃げ恥』は、リアルタイム視聴率が20.8%で、タイムシフト視聴率は17.5%だった。前者ではCMが見られる確率が高いが、後者ではCMスキップが頻発し、数字通りには見られていない。
スポンサーからすると、数字は同じでも広告の見られ方が異なるため、一律には受け止められない。現実にアメリカでは、タイムシフト視聴率を番組だけでなくCMごとに算出している。
視聴率測定の新仕様は、テレビの見られ方の現実に指標を近づけようという動きだ。そうであるならば、スポンサーから見れば、CMの見られ方も正しく反映したデータが必須となる。
しかも夜帯で15%多くテレビが見られているとなると、広告費がその分高くなりかねない。広告主は当然、単純な値上げは認められないだろう。料金面でどう合意がされるのか、大いに注目されるところである。