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『24 JAPAN』が唐沢寿明のムダ遣いで低視聴率なワケ…脚本と設定のあり得なさ

文=ミゾロギ・ダイスケ
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ドラマ『24 JAPAN』が低視聴率にあえいでいる。テレビ朝日が壮大に製作してしまった荒唐無稽な“ポンコツ番組”で、唐沢寿明のムダ使いとの声も?(画像はテレビ朝日公式サイトより)

 2001年にアメリカで制作され、世界的に⼤ヒットしたテレビドラマ『24 -TWENTY FOUR-』シーズン1(以下、原作)を、唐沢寿明仲間由紀恵栗山千明らの出演で日本に置き換えたリメイク版『24 JAPAN』が、低視聴率にあえいでいる。2020年10月より「テレビ朝⽇開局60周年記念」として放送されてるこの番組にハマっている⼈があまりいないことは、twitter上での関連ツイートが少ないことからもわかる。

 今回のリメイクに当たり、原作を改変せずに忠実にトレースすることが制作者サイドに求められたとされる。ただし、時代と舞台が異なるので多少のアレンジは加えられている。例えば、原作ではアメリカ合衆国で初のアフリカ系アメリカ人の大統領候補の暗殺計画がストーリーの軸になっているが、日本版では、初の女性総理大臣候補(仲間由紀恵)の暗殺計画に置き換わっている。また、通信機器として人々が用いているのは、2001年にはなかったスマートフォンである。

 その条件がプラスに働いたのかマイナスに働いたのか、残念ながら『24 JAPAN』は、緻密に計算された脚本が視聴者を引きつけ、毎回伏線が見事なかたちで回収され、まさかのサプライズの連続でハラハラ・ドキドキが連鎖する……といった要素がふんだんに盛り込まれたドラマにはまったく仕上がっていない。それが、今回の低視聴率や、“流行ってない感”に反映されているのだろう。

 明らかにサスペンスドラマとしては、かなりポンコツな作品である。しかし、荒唐無稽すぎてツッコミどころ満載の作品をテレ朝が大真面目に製作してしまった……そのような“やらかし作品”……と捉えてみれば、愛情がわいてこなくもない。

 そこで本稿では、まだまだ続く『24 JAPAN』を楽しむために、そのツッコミどころを4点ほど紹介してみたい。

ツッコミどころ1▶脚本がいろいろと前時代的である

 原作は2001年の作品だが、『24 JAPAN』は現在の日本が舞台になっている。20年経てば、人々の生活、価値判断基準も変わっている。また、インターネットや携帯電話の進化で、かつては困難だったことが今は容易であることも多い。ところが、昭和期にテレ朝系の人気刑事ドラマ『特捜最前線』でメインライターを務めた長坂秀佳(79)が手掛けた脚本は、そのギャップを埋められずにいる。

 たとえば第1話では、10代と思しき女性の“予定表”に同年代の友人(女性で両親と同居)の自宅の電話番号がメモしてある……という設定がある。スマホ時代の若者が、実家住まいの友人の家電番号を必要とするだろうか? そもそも、その“予定表”とはなんなのか? 夏休みの小学生か?
 
『24 JAPAN』の主人公(唐沢寿明)は、24時間体制で稼働する“テロ対策ユニット”「CTU」の本部に勤務している。そして、主人公の妻(木村多江)は、CTUの本部に直接電話をかけて、電話に出た夫の同僚職員(栗山千明・朝倉あき)と「主人はいますか?」→「いま、外出中です」といったやりとりをしている。まるで『サザエさん』の世界なのである。

 第15話でも、木村多江は急を要さないある家族内のニュースを伝えるため、CTUの固定電話に電話をして、応対した職員(池内博之)に「主人はいますか?」とやっている。1日のうちでこれが3度目。『サザエさん』でもあり得ない展開だ。

 そもそも、国家的機密情報を扱う特務機関が、単一部署の電話番号を公開するものだろうか? 公開するにしても、それは代表番号だろう。

 情報漏えいが絶対に許されないはずのテロ対策ユニット・CTU本部で、職員がスマホで外部と個人的な連絡をとっている。現在なら実際にはそのような空間への個人スマホ持ち込みは厳禁で、仮に業務上スマホ所持が必須だとしても、それは職場が支給したものであるはずだろう。そのあたりの描き分けもなされていないので、CTU本部の情報管理システムがユルユルに見えてしまうのだ。劇中でも実際にユルユルで、栗山千明は木村多江に電話で「緊急なの」と頼まれて、CTUだからこそ知り得る一般市民の個人情報をあっさり漏らしている。原作にも出てくるシーンだが、2020年代にそれはダメだ。

 こんなシーンもある。世界的に活躍するカメラマン(前川泰之)が、国際線のファーストクラスでCAを呼び止めて「すいません、あとどれくらいで到着しますか?」と質問している。いやいや、世界的に活躍していたら、到着時刻は座席の前にあるディスプレイに表示されていることは知っているだろう。しかも、そのカメラマンは飛行中の機内でスマホを取り出し、「これから行きますのでヨロシクです!」的な電話をクライアントにかけている。あり得ない。ちなみに原作ではこの場面で、2001年時点では各シートに設置されていることもあった有料機内電話が用いられていた。

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妻役は木村多江。仲間由紀恵や池内博之など、そのほかの出演者たちも豪華な顔ぶれなのだが……。(画像は『24 JAPAN』公式Instagramより)

ツッコミどころ2▶飛行機の爆発事故が軽視されすぎている

24 JAPAN』で描かれる24時間は、日本初の女性総理大臣誕生の可能性がある日……つまり、政権交代が予想される総選挙当日である。そして、政権を獲得しそうな野党第一党の党首(仲間由紀恵)の暗殺計画を食い止めるために、主人公及びCTUが奮闘する。

 しかし、その日の午前0時台に日本では大事件が発生している。国際線の航空機が上空で爆発という惨事である。これは、暗殺計画とも絡んでいるようだが……。ところがCTUは、仲間由紀恵の暗殺を防ぐために全力投球で、航空機爆発事故について初期段階の情報収集以外はほぼ何もしていない。

 また、この航空事故で国籍を問わず何百もの命が犠牲になっているはずだが、“次期総理候補”仲間由紀恵がまったくこの件に対して無関心なのも気になる。総理大臣になったら事後対策に直面するのは確実なはずなのに、それに関して党幹部と連絡も取り合わず、夜が明けてからも情報収集をしない。スマホのニュースサイトすらチェックしない。してほしい。

ツッコミどころ3▶誰も眠らない上に元気に行動しすぎである

 原作は、全24話で1日の出来事を描く作品である。深夜0時にスタートし、複数の出来事が1話につき1時間ずつ同時進行で進み、全24話で構成されるスタイルが斬新だった。それがこの作品の最大のカギだ。

『24 JAPAN』もこの形式がとられているので、夜中であっても、ほとんどの登場人物は起きている。どうしても眠ることができない環境の人物もいるが、そうでもないキャラクターも眠らない。そして、深夜2時、3時でも休むことなく動き回り、誰かと平然と連絡をとっている。一睡もせずに朝を迎え、日中もアクティブに行動する……。これが無理を生じさせている。

 CTUの主要メンバーは深夜から勤務しており、朝になっても交代しない。緊急事態で帰宅できないのはわかるが、ごく一部を除き朝番の職員が出勤する描写がないのもおかしい。なんとも不思議な勤務体系なのだ。

 また、総選挙当日も前夜から一睡もせずに選挙本部で過ごした仲間由紀恵は、翌朝、専門の運転手ではなく、一睡もしていない夫(筒井道隆)の運転するクルマで移動する。彼女は、選挙当日に前日から徹夜勤務(何をしているかは不明)の選挙スタッフを労うことも、仮眠を促すこともしない。

 栗山千明もまた、完徹後にクルマを運転しつつ、単身でテロリストから襲撃される恐れのある別の人物の警備に当たっている。

 もっとひどい例がある。会計士だと名乗る男(神尾佑)は、一睡もしない状況で、山のなかで頭を石で殴られて気絶して放置される。そこを仲間に助け出されるのだが、放置された場所から移動する際、運転するのは仲間ではなく、さっきまで気絶していた本人なのだった。しかも、彼はそれから数時間後にもう一度硬いもので頭を殴られ気絶。意識が戻るとまた、激しく動き回る。早く病院に行ったほうがいい。

 そのほか、ニュースキャスター(櫻井淳子)は、航空機事故爆発事故にまったく関心を示さず、それに対応した行動も起こさないが、なぜか眠らず過ごしている。意味がわからない。

ツッコミどころ4▶設定にあれこれ無理が生じている

 CTUは、「国の機関」などと表現され、一般市民にはその存在がほとんど知られていないという設定だ。警察官でさえ全員が認識していない。CTUと警察の業務は一部、重複しているが、その区別も不明確で、情報が共有されている様子もない。それでいて、CTUの職員は銃を携行して市民に協力をあおぐこともある。だが、いきなり「俺はCTUという機関の職員だ」と説明されても、市民としては「?」であり、協力すべきか否か迷うはずだ。存在自体が完全に極秘というわけでもないため、国が国民に積極的にCTUを周知していない理由が見当たらない。

24 JAPAN』の劇中で、CTUの職員にはキャリア組と専門職とがあるとされている。しかし、オフィス勤務の職員と、テロリストと直接対峙する職員との違いは描かれていない。唐沢寿明栗山千明は内勤もこなしつつ、いざとなったら銃を持って飛び出していく。そして、彼らの音声通信機器はスマホ1台だけ。紛失や故障でジ・エンドだ。予備スマホもなければ、警察や消防のように無線も用いていない。国家の安全を、docomoかソフトバンクかauの電波が握っているのだ。楽天モバイルかもしれない。なお第16話では、一度スマホを紛失した唐沢が、新たなスマホを持っていた。

 これまでの放送ではテロ組織の実態は明らかになっていないが、その実行部隊の面々は銃器や爆発物の扱いに慣れ、殺人を躊躇なく行う犯罪のプロのようだ。また、大量無差別テロ行う人物、顔を整形手術して別の人物になりきるスナイパーもいる。彼らの多くが逮捕・起訴され、有罪判決を受ければ極刑は必至だ。ところがその一方で、組織はなぜかバイト感覚のシロウトも雇っており、銃を握らせ、かなり重要な任務を任せてもいる。シロウトだからヘマもする。とっさに適切な判断もできない。利己的な行動に出ることもあるだろう。これは、テロ組織にとってあまりにリスクが高すぎる。

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 以上、4つの側面から『24 JAPAN』につっこんでみた。

 ここに挙げた要素のなかには「原作がそうなっているから」というのが理由のものも多くある。もしかすると、脚本家の長坂秀佳を始め、制作者側は厳しい制約のなかで苦しんでいるのかもしれない。ただ、いずれにしても原作とは無関係に、『24 JAPAN』を“ポンコツ番組” “やらかし番組”として観れば、大いに楽しめるのは間違いない。地上波での放送はあと8話。AbemaTV やTELASAでは全話を視聴できる!

ミゾロギ・ダイスケ

ミゾロギ・ダイスケ

ライター・編集者・昭和文化研究家/映画・アイドルなど芸能全般、スポーツ、時事ネタ、事件などを守備範囲とする。今日の事象から、過去の関連した事象を遡り分析することが多い。著書に『未解決事件の昭和史』(双葉社)など。

Twitter:@D_Mizorogi

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