男子カーリングの地位向上を目指した闘い
参考になるかわからないが、筆者は2月7日に韓国の仁川国際空港に降り立ってすぐ、平昌五輪公式サイトで前売りチケットを調べた。新たに取ることができたカーリングのチケットは5枚。内訳は、男子の予選リーグが1試合、男女の準決勝がそれぞれ1枚、女子の3位決定戦が1枚、女子の決勝戦が1枚。男子の3位決定戦と決勝戦は、すでに前売りチケットが売り切れだった。五輪チケットの売れ行きは男子に軍配が上がった格好だ。
カーリングに限らず、マイナー競技ほど、ワールドカップや五輪といった大舞台の影響力は絶大だ。その点、開催国枠で出場となった長野五輪から連続して出場している女子には、注目される下地があった。また、カーリングに限らず女子競技は、「美しすぎる〇〇」のフレーズに代表されるようにルックスで注目されることが多いのも大きい。それに比べ、開催国枠出場となった長野五輪以降、五輪出場を逃している男子には、残念ながらその下地がなかった。2年前に現地で見た日本選手権で、多くの観客が見守った女子決勝後に一気に客足が引き、男子決勝の寂しい情景は今でも強く印象に残っている。
そして今。開催国枠として男女が出場した長野五輪から20年がたち、その試合をスタンドで観戦していた両角兄弟とその仲間たちは、ようやく女子と肩を並べて五輪の舞台にたどり着いた。クラブチームとして活動しながら、日本選手権を連覇し、世界選手権で結果を残して実力をつけながら。地元企業をはじめとするスポンサーの協力も少しずつ増やしながら。メディアに取り上げられる機会も徐々に増やしながら。少しずつ、着実に。それは、愚直に自分たちのカーリングを求め続けた彼らの姿と重なるようにも見える。
準決勝進出を果たした女子代表は、一挙手一投足が注目され、作戦会議中に飛び交う「そだねー」という方言も話題になった。おやつタイムで食べていた菓子が、生産が追いつかないほど売れている。男子は、そのように注目されることはない。そんな彼らが届けるのはただひとつ。
「見ている人が楽しいと思えるようなカーリングを」
そして、一夜明けて迎えた21日の日韓戦。後半エンドで韓国に4点、3点のビッグエンドを許した日本は4-10で敗戦。4勝5敗の8位で大会を終えると涙を流した。混戦となった男子の予選リーグ。3位アメリカとの勝利数の差はたったひとつ。その悔しさは他人には計り知れない。「もっとできたんじゃないか」との思いもあるだろう。
日本の男子カーリング界の将来を背負う彼らの挑戦はひとつの幕を閉じた。「これで日本の男子カーリング界が変わる」なんて、無責任なことを言うつもりはない。五輪にあやかった一時的な関心で終わってしまうのか。初めて男子の試合を見た人たちのうち、どれほどファンとして定着するのか。それはまだわからない。だが、その下地はつくられた。
まずは、彼らの奮闘に温かい拍手を送りたい。そして、願いたい。彼らの流した涙が、どうか日本の男子カーリング界という石を穿つ雨垂れとなることを。
(文=土手克幸/スポーツライター)