クズすぎる音にドン引き
いろいろと突っ込みたいことはあるが、何をさておいても、やっぱり最後まで音はクズだった。いくら天馬が音の本心を察して身を引いてくれたからとはいえ、さっきまで「天馬くん……」とボロ泣きしていたのに、直後に満面の笑みで晴のもとに向かう神経にはドン引きである。天馬もつくづく「別れてよかった」と思ったに違いない。
しかも音ときたら、天馬と過ごした日々を「(晴と交際を始める前に)たくさん回り道をした」などと無駄な時間だったかのような言い草で振り返る始末。5000万円の寄付を肩代わりしてくれたことを含め、天馬がこれまでさんざん良くしてくれたことに対して、なんの感謝の念も持っていないのだろうか。ここまで主人公をひどい性格の持ち主に描く必要があったのか、はなはだ疑問である。
晴と結ばれるなら結ばれるで、ラストシーンで2人をきちんと会わせるべきだった。わけのわからない妄想シーンなど繰り広げているくらいなら、走ってきた音に晴が気付いて顔を上げ、手を振るシーンなどを描いたほうがよっぽどスッキリした。
そもそも、この時点での晴は音が来ることなど知らず、むしろ「行かない」と本人に宣言されているにもかかわらず、音が来てくれる前提で妄想を繰り広げているのも話がおかしい。あまりにも演出が不自然なせいで、この「幸せな妄想をしながら相手のもとに走る」というシチュエーションを、この後、音が事故に遭うフラグなのではないかと疑ったほどだ。
インターネットでの反響を見てもやはり同じように思った人が多かったようで、なかには「『ホリデイラブ』みたいに音が事故に遭って罰を受けるラストにしたほうが納得できた」という感想もあった。杉咲花に罪はないが、これほど嫌われてしまった主人公というのもなかなか珍しい。
最終回のレビューもけなしてばかりになってしまったが、こんなひどいドラマにもわずかばかりの収穫はあった。当初は見ていられないほどの“棒演技”だった平野紫耀がみるみるうちに生き生きと役柄を演じ始め、特に表情でさまざまな感情の変化をわかりやすく見せてくれたことと、序盤はヒステリックに目をひんむく演技ばかりで叩かれた(筆者も叩いた)今田美桜が、後半からは自然な演技とかわいらしい美貌でドラマの中の癒やしとなってくれたことだ。両者の事務所関係者は無理に主役級などを担わせず、適材適所でじっくり育ててほしいと思う。
一方、主演の杉咲花には「コメディーには向かない」とのイメージがしっかりと付いてしまった。役柄のせいもあるだろうが、表情が乏しい上になんとなく陰があり、演技のパターンも少なく、はじけた感じも一切ない。石原さとみ・長澤まさみ・綾瀬はるか・新垣結衣など、第一線で活躍している中堅女優には、コメディーものも得意とする人が少なくないだけに、演技派と目されている杉咲も今後はさらに引き出しを増やしてほしいと思う。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)