アイドルの“固定概念”は窮屈
そもそも“アイドル”というものは、明確に定義されているわけではない。メンバー全員30歳を超えているPerfumeをアイドルと呼ぶ人もいるだろうし、呼ばない人もいるだろう。あるいは、メンバー4人のうち3人が既婚者で2人が子どももいるMAXもまた、現役のアイドルグループと見ることも不可能ではないはずだ。
つまり、元来“アイドル”というものは、その定義づけが明確になされていない以上、多様な存在を内包し得るものであるはずだ。言い換えれば、「このグループはアイドルだ」と他称されればその時点でアイドルとなり、あるいは「私はアイドルだ」と自称すれば、それだけで十分にアイドルとなるのだ。少なくとも、年齢や婚歴によってアイドルか否かが決まるわけではない。
そういう意味では、prediaのオーディションの応募条件の中にある「アイドル経験要(自称可)」という条件は、アイドルの本質を捉えたものなのかもしれない。固定概念としてイメージされるものに当てはまっていなくても、自分がアイドルだと思っていさえすればアイドルである──そんな自由で多様性に溢れた“本来のアイドル”をしっかりと体現しようとするためのオーディション。今回のprediaのオーディションを、そういうふうに見ることも十分可能なのである。
「すでに多様なグループが活動していて、『アイドルは○○じゃなくてはならない』といった概念は徐々に薄れつつある現状があります。ファンもすでにその現状を受け入れていて、だからこそNaoさんの結婚は多くの人々に祝福されているのでしょう。ファンもメンバーも、アイドルにおける固定概念を窮屈に思い始めているはずで、それこそ“恋愛禁止”といったようなことを気にせず活動するアイドルも増えていくでしょうし、prediaのように年齢にとらわれないグループも珍しくなくなっていくでしょう」(前出・音楽関係者)
また、prediaから今年2月に4人のメンバーが卒業しているという事実も特筆すべきだろう。アイドルとして長く続けるという選択もあれば、アイドルとしての活動に幕を閉じるという選択もある。多様なアイドルがいてもいいのと同様に、「アイドルを辞める」という選択も尊重しているということなのだ。「事務所の偉い人の指示通りに動いていればいい」というアイドルの姿ではなく、メンバーそれぞれの選択の上に成り立っているアイドルの姿を、prediaは示しているのではないだろうか。
ブームは一段落したかもしれないが、その一方で本来の多様性に溢れた姿を取り戻しつつある女性アイドル界。シーンはとっくに新しいフェイズに移行しているのだ。「恋愛禁止」や「若くなくてはならない」などといった古い固定概念にとらわれるグループは、置いていかれることだろう。
(文=青野ヒロミ)