“奇跡の話題作”へと変化
とはいえ今回の『麻雀放浪記2020』の公開強行は例外的であり、やはり自主規制に至るのが圧倒的多数だったのは事実。東映による今回の“英断”が、今後のエンタメ界の突破口になることはないのだろうか。
「罪の内容にもよりますが、今回はコカイン使用という薬物犯罪だったために、このような強硬策が取れたのだという指摘はあり得るでしょう。新井浩文のような性犯罪事件の場合、被害者がいるのですから、撮り直しがないまま公開に踏み切るということはなかなか難しい。
しかし、実際にすでに公開済みのメジャー作品でも、端役の端役ぐらいの人が公開前に逮捕されるといったことはたまにある話です。その場合、ピクチャーロック(編集映像を完成させ、手を入れられない状態になること)前であれば、黙ってそのキャストを編集で消して完成に持っていきます。ポスターに名前が載るほどのメインキャストだった場合は、当然撮り直すしかありません。どちらにせよ、出演者の不祥事を埋めようとすると本当にお金がかかるので、いま映画の現場は『怖くて誰もキャスティングできない』という雰囲気のようです。これがテレビやCMだった場合は、問答無用で撮り直しかお蔵入りですから、本当に大変な世界ですよね。とはいえ『麻雀放浪記2020』はもともとアナーキーな世界観の作品ですから、むしろこの強硬策でハクが付いたともいえると思います。『いい宣伝になった』とは言い過ぎですが、注目度は高まりましたから」(前出・映画関係者)
ピエール騒動によって“前代未聞の問題作”から“奇跡の話題作”になった『麻雀放浪記2020』。5日の公開後、もし空前の大ヒットとなった場合……「やはりピエール瀧効果もあった」というのも、さすがに言い過ぎか。
(文=藤原三星)
●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>